研究課題/領域番号 |
26861849
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
中川 量晴 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (60585719)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 摂食嚥下障害 / 咽頭微小電気刺激 |
研究実績の概要 |
健康成人、健康高齢者および有病高齢者の嚥下誘発に関わる咽頭領域の有効刺激条件を解析することを目的とした。中咽頭後壁を様々なパラメータの方形パルスで(刺激頻度: 10, 15, 20 Hz,刺激強度: 0.2-2.5 mA)電気刺激し、嚥下反射が誘発されるか検討した。 刺激を感知した刺激強度を知覚閾値(Pe-Th)、飲み込みたくなった刺激強度を嚥下閾値(Dsw-Th)、痛みを感じた刺激強度を痛覚閾値(Pa-Th)と定義し、まず健康成人の性差ごとに刺激強度を解析した。その結果、Pe-Th、 Dsw-Thおよび Pa-Thはいずれも男女間で有意差はなく、飲み込みたくなる咽頭刺激条件は性差の影響をうけないことが示された。 次に加齢による影響を検討したところ、以下の知見を得た。①Pe-Thは、加齢の影響を受けずに全ての者で認識された。②Dsw-Thは、若年者;10-15Hz、高齢者;15-20Hzで最も多く認識された。③Pa-Thは、20Hzでは若年者;100%,高齢者;30%が痛みを感じた。④15Hzにおいて、高齢者は若年者と比較して、Dsw-Thが有意に高くなった。即ち高齢者においても嚥下誘発は可能であり、加齢により咽頭感覚閾値は高くなることが示された。 一方、脳血管障害由来の仮性球麻痺患者の嚥下誘発に関わる咽頭領域の有効刺激条件は一定ではないことが推察される。Pe-Th、Dsw-Th、Pa-Thともに被験者によるばらつきを認めるため、さらに被験者を増やし基礎的データを取得する必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嚥下誘発システム(咽頭刺激装置)や咽頭領域を描出する超音波診断装置(Toshiba社製、Powervision6000)などの研究環境に問題はないが、対象となる被験者の募集人数が計画よりも若干不足している状況である。 また、飲み込みたくなる咽頭刺激条件は、健康成人では性差の影響をうけない、健康高齢者では感覚閾値が高くなるという過去の研究データに基づき、有病高齢者においても刺激条件を設定している。本研究では、設定した刺激条件で嚥下が誘発されない場合は、即時に咽頭刺激を中断し他のリハビリテーションに切り替えている。そのため、すべての被験者からデータを取得できない状況であり、解析に要するデータ収集がまだ十分でないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
脳血管疾患後遺症患者の病態は画一的でなく複雑であるため,全身的にまったく同じ状態の被験者を確保することは困難である。よって、本研究の被験者の選定条件を一部変更する。被験者は、脳血管障害発症からの期間・全身状態の安定度・誤嚥性肺炎の既往などを聴取し、同様の経過をたどった者とし、他疾患との重複、服薬状況が明らかに異なる者は除くとしていた。しかしながら、除外基準を一部緩和し、他疾患との重複については、他疾患により明らかな全身状態の変調をきたしている場合を除いては、疾患を別に有している場合でも被験者として含むこととする。 さらにその選定条件で,脳血管障害由来の仮性球麻痺および球麻痺患者を募集することができれば,それらを2群に分け,それぞれの刺激条件を比較して解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の国際学会参加を2学会予定していたが、研究の進捗やデータ解析の状況などから総合的に判断し、1学会のみの参加とした。そのため、国際学会参加のために計上していた旅費に差額が発生し、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、今年度と比較しより多くの研究被験者を募る予定である。今回生じた次年度使用額は、人件費および謝金に加えて計上し、使用する予定である。
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