研究課題
経管栄養管理されている者の嚥下頻度は,健常者と比較して有意に低下し,唾液誤嚥などのリスクが高まると報告されている。そこで,日常的な随意嚥下の回数を増やす訓練は,唾液誤嚥のリスクを低減させる効果があると仮説を立てた。先行研究では,若年健常者(男性・女性),高齢健常者を対象とし,中咽頭後壁をさまざまなパラメータの方形パルス(刺激頻度10-20Hz,刺激強度0.2-2,5mA)で刺激したときの嚥下動態を観察した。刺激を感知する刺激強度を知覚閾値(Pe-Th),飲み込みたくなった刺激強度を嚥下閾値(DSw-Th),痛みを感じた刺激強度を痛覚閾値(Pa-Th)と定義し,性差,年齢によって相違があるか解析した。その結果,若年健常者では,周波数10-15Hz,刺激強度1.1-1.3mAで嚥下が誘発されやすいという結果を得た。またPe-Th,DSw-Th,Pa-Thはいずれも男女間で有意差はなく,嚥下誘発条件は性差の影響を受けないことが示された。次に加齢の影響を検討したところ,高齢健常者では周波数15Hz,刺激強度1.5-2.0mAで嚥下が誘発されやすいことが明らかとなった。高齢者の咽頭領域への微小電気刺激により,嚥下誘発が可能であるがDSw-Thは有意に高くなったため,加齢により嚥下誘発閾値は高くなることが示された。一方,有病高齢者の嚥下誘発に関わる咽頭領域の有効刺激条件の解析は,摂食嚥下障害に対する訓練法としての基礎的なデータとなることが期待される。急性期病院に入院中の患者を対象に健常者と同様の咽頭刺激を施行した場合,刺激を感知できる者にばらつきを認めた。Pe-Th,DSw-Th,Pa-Thはいずれも検知困難であり,刺激条件の再考を要した。有病者の場合,健常者と比較して試験に対する耐久性が低下しているため,試験時間を短縮するために刺激方法,条件を工夫する必要がある。今後さらに被験者を増やすため,被験者の選定条件,刺激方法を改良して検討を継続する。
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10.1111/ggi.12670