研究実績の概要 |
今年度は、研究計画書の目的2 患者側の要因(認識・実態)を明らかにする、と目的3 患者に与える身体的影響と心理的影響を明らかにする に関する質問紙調査を実施した。 日常的に皮下注射を実施する患者としてインスリン自己注射を実施している糖尿病患者を対象に、その認識と実態について調査を実施し明らかにした。加えて、皮膚消毒実施の有無と関連する要因についても調査を実施し、その検討も行った。 本研究の成果の意義は、皮下注射前の皮膚消毒の実施状況について患者の実態が明らかになったことで、今後は実態を踏まえた指導が可能となることがある。また、従来、皮下注射前の皮膚消毒は局所感染を防ぐ目的で実施されているが、本調査の結果では、局所感染である皮膚トラブルの発生と皮膚消毒の未実施には因果関係が考えにくく、皮下注射前の皮膚消毒は、省略しても感染を起こさないという先行研究(Koivisto, et al, 1978, Fleming, et al, 1997)を否定できない結果となっており、今後の皮膚消毒の在り方について考える資料の一つとなることである。 近年、本テーマである皮下注射前の皮膚消毒に関しては、災害などの緊急時は不要であることがマニュアルに明記されたことや、優先度が低いプロセスであることが看護師国家試験に出題されており、注目されている。本研究の結果は、災害時だけでなく、非常事態時の対応を判断する上でも有用な情報となり、今後の患者指導、基礎看護教育を考える上での有用な資料と成り得る。 なお、本研究の目的は、皮下注射前の皮膚消毒の必要性を検証するものでは無く、医療者と医療の受け手が状況に応じて皮下注射前の皮膚消毒の実施の有無を選択できる情報を提示することである。
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