研究課題/領域番号 |
26861859
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
笠原 康代 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (00610958)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 危険予測能力 / リスク知覚 / 看護学生 / 安全教育 |
研究実績の概要 |
【目的】本研究は、看護基礎教育における医療安全教育の一環として、学生の危険予測能力を育成するための教育ツールの改良および効果検証を目的としている。平成26年度は、看護師と看護学生を対象にした実験結果から、臨床現場における看護学生のハザード知覚の特徴を看護師と比較することで明らかにし、提示画像の内容や解説機能、およびプログラムの操作性に関する検討を行った。 【内容】 ・看護学生のハザード知覚の特徴の明確化 対象者は看護師と看護学生である。実験手順は、iPadに画像を20秒間提示し、危険を思った箇所をタッチしてもらった。提示画像は5場面であった。まず、危険箇所の指摘総数について検討した結果、5場面中3場面で、看護師と看護学生の間で有意差があった。いずれも、看護学生の方が看護師より少なかった。また、各場面で我々が危険と考えたターゲットの指摘の有無について検討した結果、5場面中4場面で有意差があった。いずれも、看護学生の方が看護師より指摘できていなかった。このことから、看護学生は看護師よりもハザード知覚が乏しく、また重要な箇所を見逃している可能性が高いと考えられた。また、両者がタッチした全ての箇所について検討した結果、治療や援助に直接関係するハザード知覚は看護師の方が看護学生より優れていたが、棚の配置などの療養(ベッド周辺)環境に関するハザード知覚は看護師よりも看護学生の方が注意を向けている傾向が推察された。 ・危険予測トレーニング用プログラムの改良 病棟看護師が多く指摘した各画像における危険個所や発見後の対処方法については「臨床知」として集約し、本プログラムを用いて学生が学習する際、提示画像の中に潜む危険箇所を指摘するだけではなく、看護師の指摘箇所やそこに潜むリスク、また発見後の対処法についても繰り返し学習できるよう、プログラムの改良を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、看護基礎教育における医療安全教育の一環として、看護学生の危険予測能力を育成するための教育ツールの改良および効果検証を目的とし、平成26~28年度の3年間計画で進めている。 平成26年度は、看護師と看護学生が危険と捉える事象および発見後の対処法の相違について検討し、ある程度明確になった。しかし、それらの結果を反映させ、提示する画像を改善し、発見後の対処法等に関する解説機能をどのようにプログラムに実装させるか、といった検討が十分できていない。よって、平成27年度は早急にプログラムを改善し、実験2「危険予測トレーニング用プログラムの評価および改良(学生への実験で実用可能性の評価と課題を検討する)」を実施していく。
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今後の研究の推進方策 |
<平成27年度の計画> 実験2「危険予測トレーニング用プログラムの評価および改良」の実施 実験1の結果を受け、提示画像や発見後の対応方法(解説機能)を発展させたプログラムを用い、学生への介入研究に取り組む。対象者は、看護学科4年生約20名と看護系大学以外の学生約20名の計約40名を予定している。研究方法は、まず研究目的の説明と実験器材の使用方法を確認する。画像は「薬剤(注射、内服薬)」「転倒転落」「チューブ・ドレーン管理」「検査」「医療機器」の事故に関連するものをランダムに提示し、画像から予測される事故や対処法について発話してもらう。発話内容はiPadに自動録音する。次に、学生が実際に指摘した場所と気づいてほしかった危険個所および発見後の対処法の例を解説として提示し、学習してもらう。分析は、学生の危険予測能力(危険と捉える事象、発見速度、観察プロセス、予測される事故、対処法)と注意力に関して、データを取得する。プログラムの操作性や解説機能、使用後の感想等についてのヒヤリング調査もあわせて実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の計画にあった実験1は、平成25年度末に着手できた。よって、平成26年度は実験参加者への謝金の支出が発生しなかったため、次年度の使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、実験2として学生を対象とした実験を計画している。次年度への繰り越し分は、その際の実験器材費や実験協力者への謝金、およびプログラムを改良する費用にあてる予定である。
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