研究課題
肥満はメタボリックシンドロームなどの多く疾患の原因として、その予防および治療に関する研究が世界的な規模で取り組まれている。一方で、乾癬などの慢性皮膚疾患の発症や、褥瘡有病率、創傷治癒の遅延などに関しても肥満との関連が報告されている。しかしながら肥満による皮膚障害に関して、その発症メカニズムや予防ケア方法に関する研究報告は非常に少ないのが現状である。近年、肥満モデルマウスの皮膚を解析した研究により、肥満に伴う酸化ストレスの上昇や皮下脂肪組織からの局所的な影響が明らかになってきた。そこで本研究では、抗酸化、抗肥満作用を有する天然成分を用いた肥満皮膚障害に対する食事療法の確立をめざし、基礎的検討を行った。本研究では、強力な抗酸化および抗肥満作用を有するアーユルヴェーダ生薬Terminalia belliricaの主要成分のひとつであり、多彩な薬理作用を有するポリフェノールである、Gallic acid(GA)に着目し、GAの肥満に伴う皮膚障害に対する食事療法への有用性について検討した。前年度までに、肥満モデルマウスに対しGAを混餌で3か月間投与した実験の結果、腸管膜脂肪の蓄積および皮下脂肪組織における脂肪細胞の肥大化を抑制する作用が示され、脂肪組織に特異的に効果を示すことが示唆された。そこで、GAの脂肪細胞への作用にメカニズムついてマウス由来前駆脂肪細胞(3T3-L1)を使用した解析を行った。その結果、GAは脂肪細胞の分化を促進する作用を示し、善玉のサイトカインであるアディポネクチンの分泌を有意に促進することが明らかとなったため、この研究成果を含めて論文として発表した。
すべて 2016
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Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 39 ページ: 1137-1143
10.1248/bpb.b16-00064.