研究課題/領域番号 |
26861876
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
山根 拓実 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (80637314)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 創傷治癒 / FGF21 / 滲出液 / 皮膚 |
研究実績の概要 |
栄養状態と褥瘡は密接な関連があることが報告されている。そのため、寝たきり高齢者の栄養状態を常時把握しておく必要がある。従来、栄養状態を確認する方法としては、血液検査におけるアルブミンを指標とした評価方法が用いられてきた。しかしながら、この方法は医師や看護師など医療従事者であることが必須であり、痛みや医療廃棄物の問題も懸念される。そこで申請者は在宅で簡便で誰にもでき、さらに痛みの少ない栄養状態診断の方法を開発すべく、創から得ることが出来る滲出液に着目した。本研究課題では、栄養状態により変動する滲出液中のタンパク質を網羅的に解析し、マーカーとなりうるタンパク質を見出すことを目的とした。 6週齢のWistar系雄性ラットを用いて、1週間の馴致後、無タンパク質食、アミノ酸バランスの悪いタンパク質(グルテン)食を1週間摂取させた。除毛クリームを用いて除毛し、両側腹部まで至る全層欠損創を作製し、経時的変化を肉眼的所見及び創面積の比較により評価した。同時に滲出液、血清を回収し、サンプル中のタンパク質をサイトカインアレイ及びELISAを用いて解析した。創作製後4日から7日において、無タンパク質食群で有意な治癒の遅延が認められた。さらに、サイトカインアレイを用いて解析を行ったところ、無タンパク質食摂取群では、滲出液及び血清中のfibroblast growth factor(FGF)21が著しく増加を認めた。ELISAを用いて再現性を確認したところ、同様に滲出液及び血清中のFGF21の増加を認め、栄養状態を評価するマーカーとしての可能性が示唆された。グルテン食摂取が滲出液成分に及ぼす影響に関しては、現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質栄養によって変動する浸出液中のタンパク質を同定することが「研究の目的」であり、昨年度は無タンパク質食摂取時に滲出液中のfibroblast growth factor(FGF)21が増加することが明らかとなった。アミノ酸バランスの悪いタンパク質(グルテン)食が滲出液の成分変化に及ぼす影響は現在検討中であるため、本研究課題の当初研究目的の達成度はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より、無タンパク質食摂取時には滲出液中のfibroblast growth factor(FGF)21が増加することが認められた。本年度は、アミノ酸バランスの悪いタンパク質(グルテン)食を1週間摂取させたラットに全層欠損創を作製し、経時的変化を肉眼的所見及び創面積の比較で検討する。同時に滲出液を回収し、滲出液中のタンパク質をサイトカインアレイ、ELISA等を用いて解析する。 当初は二次元電気泳動法により滲出液中のタンパク質を解析を行う計画であったが、手法の確立が困難であったため、代替法としてサイトカインアレイを用いることとした。
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次年度使用額が生じた理由 |
従来の計画では、タンパク質の網羅的解析を二次元電気泳動法を用いて行うはずであったが、方法の確立が困難であったため、サイトカインアレイでの検討を行った。そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
グルテン食摂取ラットの血清及び滲出液中のタンパク質を網羅的に解析するために、サイトカインアレイを購入予定である。
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