日本看護協会が、倫理的問題に直面した看護職がその解決に向けて組織的な検討ができるよう、2006年に発表した「臨床倫理委員会の設置とその活用に関する指針」の、透析施設での活用に関して実態調査を行った。 今年度は、アンケート調査と専門家からのヒアリング調査を行った。 アンケート調査は、日本腎不全看護学会ホームページ透析療法指導看護師分布マップより透析治療を行っている施設を抽出し、全国511施設のうち研究への同意が得られた130施設の看護管理者が対象となった。その結果、活用している施設28.2%(36施設)、活用していない施設71.7%(93施設)であった。活用している施設の施設形態は、一般病院が100%であり、無床の一般診療所は0%であった。「臨床倫理委員会設置とその活用に関する指針」の活用はしていないが、倫理的問題に関する事例検討会を行っている施設は、活用していない施設のうち51.5%であった。自由記述からは、「活用必要性の認識があるがどう活用するか分からない」、「多職種間で倫理的問題を検討する機会が不足している」、「透析拒否等関わりに困難感を抱く事例が増えてきている」、「業務の多忙さやマンパワーの少なさから倫理的問題検討の環境がない」などの意見があった。 ヒアリング調査は、透析看護経験10年以上の看護師5名に行い、指針の認知状況の低さとともに、透析看護特有の倫理的問題の解決に向けた新たな指針の必要性を認識していることが分かった。 アンケート調査とヒアリング調査を通して、指針は一般病院で活用している病院があるが研究倫理等に限られている場が多く、事例の検討に活用している施設は少ない現状が明らかとなった。更に、無床施設では、看護師が倫理的問題に直面した場合の解決方法として統一した方法がないことから問題意識を抱いている看護師の存在が明確となった。
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