甲状腺癌の放射性ヨード(I-131)内用療法を行う患者に対して,無作為にアロマセラピー介入群と非介入群に分け,治療上高頻度に生じる甲状腺機能低下の症状や,非密封線源治療病室(RI室)という特殊な環境下で生じる不安やストレスに対する症状緩和の有無の評価を目的した。 分化型甲状腺癌にて甲状腺全摘出術が施行され、放射性ヨード内用療法目的にて当科に紹介入院となった患者のうち、85名の患者に研究参加の同意を得た.データの欠落などを除いてアロマセラピー介入群35名、非介入群36名を最終的な評価対象患者とし評価した. 結果は身体的評価として①唾液アミラーゼ活性(ストレスマーカー):非介入群で治療時に有意に増加(P<0.03)し,介入群では有意な変化無しとなった.②サクソンテスト(唾液分泌能検査):非介入群で治療後に有意に低下(P<0.05)し,介入群では有意な変化無しとなった.また,心理的評価としてSTAI(the State Trait Anxiety):介入群でRI入室中に有意に低下(P<0.05)し,非介入群では有意な変化無しとなった。 今回使用したオイルの一つであるCitrus limonは主成分であるリモネンに安眠作用ならびに抗不安作用および鎮静作用が見られたことから,このリモネンが抗うつ作用を持つと考れた。 アロマセラピーは,分化型甲状腺癌のRI治療時における入院ストレスやホルモン休薬に伴う甲状腺機能低下症状(食欲不振,抑うつ傾向等)を軽減する可能性が示唆された.
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