本研究では成人期にある慢性心不全患者の身体の理解の特徴とセルフケア行動の実態を明らかにし、これらに関連する要因を検討した。 質問紙調査における対象者数は68名(30・40歳代:9名、50・60歳代:21名、70・80歳:38名)であった。心不全であった期間は平均8.0±7.4年、脳性利尿ペプチド(NT-pro BNP)値は平均1979.0±2771.7pg/ml、左室駆出率(LVEF)は45.3±19.6であった。慢性心不全患者のボディイメージ(BIAT得点)は、身体カセクシスの混乱は平均3.3点、身体境界の混乱は平均3.8点、身体の離人化は平均3.8点、身体コントロール感の低下は平均3.0点、身体尊重の低下は平均3.1点であった。心不全セルフケア行動尺度の得点は平均27.4±9.5点であり、健康関連QOL(SF-8)は身体的健康(PCS)39.7±10.2、精神的健康(MCS)47.7±8.7であった。30・40歳代、50・60歳代、70・80歳代におけるBIAT得点の比較では、身体コントロール感の低下と身体尊重の低下において有意な差を認めた(順に、p=0.048、p=0.047)。 インタビュー調査における対象者数は15名であった。慢性心不全患者は心疾患がある身体を心不全症状の変化で捉えており、細かく観察していることが分かった。これらの身体の理解はセルフケア行動の必要性を認識することに繋がっていた。 成人期にある慢性心不全患者は心疾患を持つ身体は「他者から理解してもらうことが難しい」と感じており、「自分自身の役割が思うように果たせないこと」や「他者から休憩していることを不信に思われた」と感じており、他者との関係が患者のボディイメージやセルフケア行動に影響していることが示唆された。一方、高齢期にある慢性心不全患者は「家族に任せようと思う」「これからは無理をしない」という内容が多く、持っていた役割を他者へ委譲することでセルフケア行動を行っていることが分かった。
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