平成29年度は、平成28年度に引き続き術前貯血式自己血輸血に伴う自己血採血を受ける症例を対象に測定を進めた。疾患により手術件数が少ない時期があり、予定より累積症例数の達成度に遅れが生じていたが、研究協力施設との連携強化に努め、必要症例数を概ね確保できた。本年度は、超高齢化社会の到来により手術を受ける患者の高齢化が進んでいる現状を踏まえ、加齢による自己血採血中の自律神経活動への影響の観点も分析に加え検討を行った。その結果、安静時の自律神経活動に加齢に伴う減弱が見られ、その影響は自己血採血中も持続することが観察された。一般に、血管迷走神経反射のリスク因子のひとつに「若年」があることが、実態調査によって指摘されている。しかし、その機序は明らかではない。これらの実態調査の結果を鑑みると、若年層では自己血採血中の自律神経活動に何らかの変調が生じている可能性が推察されるが、本研究期間中は若年層の症例数が少なかったため、高齢層との比較など年齢層別での検証を十分に行うには至らなかった。今後の展望として、本研究での成果にもとづき、明らかとなった課題の検証に取り組み、統計学的正確度の向上に向けてさらに症例数を増やし、多角的に検討を行う必要性が考えられた。 研究期間中、本研究で得られた成果の一部を国際学会で発表を行い、他研究者と研究結果を共有し意見交換を行った。 なお、本研究の実施に伴う有害事象は認められず、試験は安全に実施できた。
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