研究課題/領域番号 |
26861897
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
土井 英子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (10457880)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | がん看護 / 口腔粘膜炎 / 放射線療法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、放射線療法を受ける頭頸部がん患者の口腔粘膜炎の重症化を予防する看護プログラムを開発することである。 本年度は、放射線治療の経過に応じた口腔粘膜炎の重症化を予防するためのケア内容の特定、口腔粘膜炎重症化予防プログラムの試案作成に向けた調査の実施を目標とした。放射線療法を受ける頭頸部がん患者を対象とし口腔粘膜炎に対して実施しているケアの内容、医療者から提供された知識・技術の内容等について調査し、口腔粘膜炎の重症化を予防するためのケアの全体像を明らかにすることを目指した。 がん診療連携拠点病院において放射線療法を受ける頭頸部がん患者を対象に調査を行い、現段階で5名の調査を実施することができた。調査データの分析途中ではあるが、放射線療法を受ける頭頸部がん患者は、化学療法併用の有無や放射線照射野などにより症状の程度や出現時期が異なるものの放射線療法を受ける患者から聞いた状態と自身の状態とを照らし合わせ口腔粘膜炎の変化を継続して観察していた。多くの患者は、口腔粘膜炎の発症前に口腔内の乾燥や唾液の粘度の変化を察知し、口腔粘膜炎が出現する可能性が高い時期にあることを認識していた。そして、口腔内の保清や湿潤を維持するための口腔ケアは、口腔粘膜炎の出現前は医療者からの指示であり遵守するもの、治療のために自分にできることと捉えており、口腔粘膜炎の出現後は口腔粘膜炎やそれに伴う疼痛が緩和できるものという認識が加わることが明らかとなった。 放射線療法を受ける頭頸部がん患者の口腔粘膜炎の重症化を予防するためには、治療開始前より口腔ケアの重要性を含めた知識とスキルの提供、口腔内の感覚の変化を活用して個々の口腔粘膜炎の程度に合わせた関わりが求められていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れていると評価した理由は、平成27年度に計画していた「放射線療法を受ける頭頸部がん患者の口腔粘膜炎の重症化を予防するための看護プログラム試案」作成のための調査はできたが、試案の作成が途中段階であるためである。対象者は、放射線照射を25~30回継続して行うため、対象者ひとりの治療が完遂するまでに約2ヶ月を要する。データ収集に多くの時間を費やしたこと、口腔粘膜炎とそれに伴う苦痛な症状等により対象者の確保が難しかったことが原因である。現在、調査施設を拡大し、対象者数を確保できるよう活動している。現在、得られたデータの分析途中ではあるが、頭頸部がん患者の口腔粘膜炎の重症化を予防するためには、口腔粘膜炎が発症する前からの知識・技術を提供し、患者の口腔内の感覚を活用することの必要性が示唆されたため、早期に看護プログラム試案を作成する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、研究を推進する予定である。まず、対象者数を確保し、得られたデータの分析を進め、看護プログラム試案を作成する。平成28年度は作成したプログラム試案の妥当性を検証するために、専門家に妥当性を検討してもらい、プログラムを修正した後に放射線療法を受ける頭頸部がん患者に試験的に導入する。患者の意見と看護実践家から運営上の改善について意見を聴取し、プログラムを完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
放射線療法を受ける頭頸部がん患者が口腔粘膜炎に対して実施しているケアの内容、医療者から提供された知識・技術の内容等に関する調査の着手が遅くなったこと、効率的な研究打ち合わせが実施できたため、物品費、人件費・謝礼において計上していた予定額よりしたまったと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
口腔粘膜炎の知識やスキルの教育を行うために計上していた視聴覚教材のための設備備品を平成28年度に変更して計上する予定である。物品費は、関連図書や文献購入、資料整理のための文具等の消耗品、印刷のためのインク、用紙等に使用する。旅費は、調査施設の拡大やプログラム試案作成に向けた調査のための面接、看護プログラム試案について専門家からの意見を聴取して実現可能性の高いものとするために使用する。また、研究成果を国内の関連学会での発表を計画している。国際学会では発表は行わないが、日本と比べて放射線療法が圧倒的に多い欧米諸国の放射線治療の実態把握や研究の現状の把握のために海外旅費を使用する予定である。
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