研究課題/領域番号 |
26861898
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研究機関 | 新潟県立看護大学 |
研究代表者 |
渡邉 千春 新潟県立看護大学, 看護学部, 助教 (50613428)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 終末期がん患者 / 輸液療法 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
今年度は、終末期がん患者・家族の輸液療法に対する看護の実態調査についての論文作成を行い、現在掲載待ちの段階である。対象者は346名(有効回答率34.3%)であり、平均年齢は、36.5(±9.4)才、経験年数は14.4(±9.1)年、がん看護経験年数は8.2(±6.9)年であった。終末期輸液治療のガイドラインの認識について有と答えた看護師は全体の22.8%(79名)、無は77.2%(267名)であり、緩和ケアチームが終末期がん患者の輸液療法に介入したことがある割合は47.4%(136名)、栄養サポートチームは40.7%(125名)であった。 観察・アセスメントについて、一般病棟では、「腹水」、「悪心・嘔吐」、「消化管閉塞」(p<0.01)、「気道分泌」、「患者・家族の輸液療法に対する希望とその理由」、「輸液療法を行うことが患者の退院・自宅での生活のバリアとなっていないか」、「輸液療法に対する患者・家族の希望にずれ等の問題は起きていないか」、「患者の意思決定能力に問題はないか」(p<0.05)において病棟間で有意な差がみられた。また、看護の実際として、一般病棟間では、「患者・家族の輸液療法に対する考え方や不安を十分に聞く」、「患者・家族に輸液療法に関する適切な説明をする」他3項目(p<0.01)、「患者・家族の輸液療法について看護師間で検討する」他2項目(p<0.05)において有意差がみられた。以上のことから、終末期がん患者への輸液療法について看護師の意識や認識は低く、患者・家族への意思決定支援について課題があることが明らかとなった。現在、これらの状況の中で、患者・家族が輸液療法についてどのような認識を抱いているのかを明らかにするための質的研究の準備を進めている。研究協力者を通して、対象施設の内諾を得ており、倫理審査を受ける段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、終末期がん患者・家族の輸液療法についての認識を県内のがん診療連携拠点病院を対象として質的研究で行う予定となっていた。だが、実態調査の論文作成に時間を要した他、質的研究を行うために研究協力者を追加することとなった。現在、研究協力者は、県内のがん看護専門看護師、認定看護師合わせて5名である。それぞれの勤務地がやや離れていることもあり、研究開始にあたっての情報共有や打合せ等にも時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在予定している質的研究を行いながら、同時に研究協力者とEBPプロセスに ついての学習会を進めていく予定である。学習会を企画する上で、研究者が終末期がん患者に関するEBPに関する文献検討を事前に行う予定である。打合せ等については、県内で行われる研修会等にできるだけ合わせて行うことや、それぞれの所属施設で実施させて頂く等して負担がないよう配慮するつもりでいる。また、質的研究の分析においては、がん看護や質的研究に精通したスーパーバイザーを依頼し、結果の信頼性・妥当性を損なわないようにする。スーパーバイザーについては、すでに依頼し、内諾を得ている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、質的研究を行う予定であったが、研究協力者との調整等で時間を要したため、研究実施が次年度にずれてしまった。そのため、研究協力者のいる施設での倫理審査の準備の打合せ等の旅費、インタビューに使用する物品の購入、逐語録の作成に伴うテープ起こしの業者依頼や研究参加者への謝礼、スーパーバイザーへの謝礼が次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費については、EBPの文献検討の学会発表や研究打合せの他のEBPの研修等の参加の旅費とする。また、質的研究実施にあたり、必要な物品購入や業者等の依頼費用、参加者への謝礼、スーパーバイザーへの謝礼とする。また、研究協力者との打合せの会場費用の他、今後EBPプロセスを学習していくことになるため、文献検索ソフトの購入も予定している。
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