研究課題/領域番号 |
26861902
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
小野 博史 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (70707687)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | postoperative delirium / mental function / recovery process |
研究実績の概要 |
食道亜全摘術と2領域もしくは3領域のリンパ節廓清術を受けた術後患者19名を対象として得られた術後1週間にわたる観察データとNEECHAM混乱錯乱スケール得点を分析した。NEECHAM混乱錯乱スケールを通して患者の術後精神状態を定量化したデータからは、その得点が手術後に激しく低下し、時間をかけてゆっくりと術前の精神状態へと回復していくというプロセスが確認された。特に抜管後から3日間の平均得点は、せん妄の存在を否定できる25点を下回っており、術後数日間においてせん妄が発症しやすいという臨床的知見を裏付ける結果が得られた。この知見に基づき、第10回日本クリティカルケア看護学会学術集会での学会発表を行った。また対象を、術前に脳変性疾患の既往があった患者や術後合併症を発症した患者とそれらの発症を認めなかった患者の3つに分けてNEECHAM混乱錯乱スケール得点の変化を比較した結果から、脳変性疾患が術直後の精神機能低下をエンハンスしてその回復を遅らせていること、術後合併症は手術侵襲とは異なる2次的な身体侵襲を患者に与えて、手術侵襲の影響とは異なったせん妄のリスクを生み出していることを明らかにした。これらの知見について18th East Asian Forum of Nursing Scholars (EAFONS)での学会発表を行った。現在、この2つの知見について深く分析した論文を投稿準備中である。並行して、食道癌切除術後患者から収集した観察データに基づき、術後精神機能の回復状況を評価するためのアセスメントツールの項目を作成する作業を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度では、術後精神機能の回復状況を評価するためのアセスメントツールの項目作成を目標としていたが、NEECHAM混乱錯乱スケールを用いた量的なアプローチによる術後精神機能の回復プロセスの特定を行ったため、アセスメントツールの項目作成には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在の分析を進めていくとともに、他施設による他疾患のデータをあらたに収集してデータの一般性を高め、アセスメントツールを作成する。引き続き、その施設に暫定版のアセスメントツールの使用を依頼し、NEECHAM混乱錯乱スケールとの基準関連妥当性を確認してアセスメントツールを完成させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の分析が当初の計画予定よりも遅れ、必要な調査や会議を開催することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
あらたな調査やデータ分析の会議に伴って発生する謝金や旅費に割り当てていく。
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