平成27年度は、救急看護師が終末期ケアを実践するときに抱く葛藤の様相を明らかにするために、救急患者の終末期ケアを実践した体験を有し、本研究参加に同意を得られた看護師11名を対象に実施した半構造化面接の結果について、救急看護師が終末期ケアを実践するときに抱く葛藤に焦点を当て、質的帰納的に分析を行った。 結果として、救急看護師は【重症患者の救命を第一義とする状況での看取りであるため終末期ケアを実践しにくい特殊な環境にある】なか【救急という特殊な環境での終末期ケアの実践に負の感情がつのる】体験をし、それらは、【患者の意思を第一と考えるために生じる葛藤】【ケア環境に関する葛藤】【望ましいケアとのはざまで生じる葛藤】【死を敬うことができない自分への葛藤】【医療者間での価値観の相違で生じる葛藤】【限りある命や医学の限界への葛藤】につながっていた。しかし救急看護師は【救命と看取りという相反する役割期待のなかで救急看護師としての存在価値をもつ】【葛藤を伴う救急での終末期ケアの現実に自分なりに対処する】ことで、さまざまな葛藤を抱きつつも【看護師として死に立ち会うものの責任を果たすため看護ケアを実践する】ことをしていた。 救急看護師は、特殊な環境のなか求められる終末期ケア実践に葛藤を抱きつつも、その葛藤に適切に対処することで、終末期ケアに価値をもって実践していた。救命がなしえず死の転帰をとる患者やその家族への終末期ケアの質がさらに向上するためには、救急看護師が終末期ケア実践に対して抱く葛藤に疲弊することなく、適切に対処することができるような看護師への支援を検討する必要性が示唆された。
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