本研究の目的は、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の遺伝学的検査を受検するか否かを考える人々および遺伝学的検査の結果BRCA1/BECA2遺伝子変異を有していることが判明した人々のニーズを明らかにし、サポートツールを開発・評価することである。 BRCA1/BRCA2遺伝子変異は、これまでは「これから発症するかもしれないがん」に関連した話であったが、2018年7月よりコンパニオン診断として遺伝子変異を調べるという選択肢も提示されるようになり、「現在のがん治療」に関連した話に拡大した(リムパーザががん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの治療薬として適応が拡大された)。また、がん患者を対象とした遺伝子パネル検査の中で二次的所見としてBRCA遺伝子変異が提示される状況も検討しうる必要性がでてきている。 遺伝学的検査をめぐる状況は大きく変化しているが、今年度は複合的な課題の検討結果やヒアリング調査結果、他者の経験・体験を活用できるツールとしてWebにおける情報構築・情報収集の基盤の作成に至った。 現在、入手可能な日本語書籍の中で、遺伝学的検査を経験した人々、リスク低減乳房切除手術を経験した人々の体験談を分析したり、遺伝学的検査が陰性であった人々の心理社会的課題、BRCA検査結果に関する家族との情報共有に関して文献検討を行い、遺伝学的検査を課題の検討に至った。また作成したサイトは今後も継続的に活用状況の評価、情報収集・発信ができるような基盤を構築した。
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