平成28年4月に研究対象となる患者の診療科である耳鼻咽喉・頭頸部外科の医師に研究内容の説明を行い、了承を得た。その後、該当患者が入院する病棟管理者に研究同意を得た後に、5月よりデータ収集を開始した。特に、手術後の離床プロセスにおいて心電図測定を行うものであるため、プロトコルではNumerical Rating Scaleが4以上の際にはデータ測定を中止し、医師または看護師に報告することとしていたため、協力を得られるように説明した。研究対象の患者に同意を得る際は、術前の麻酔科受診後に、麻酔による自律神経への影響を説明し、通常の麻酔や手術を行うことや、術後の経過において著しい制限などはないことを口頭で説明し、文書にて同意を得た。データ分析に必要な有効な対象者数を30名と設定し、合計34名からデータを収集した。データ測定中に、医療処置を必要とする有害事象を認めた対象者はいなかった。不十分なデータであった4名を除いた30名のデータで分析を行った。本研究は、仰臥位,ベッドアップ45度,ベッドアップ90度.端座位,立位の5段階の離床プロセスにおいて、全身麻酔を受ける手術前と全身麻酔を受けた術後1日目,3日目を比較した場合、循環動態や自律神経への影響を検討する目的である。結果として、①術前,術後1日目,術後3日目での5つの体位間において、心拍数,血圧,一回心拍出量,心係数,副交感神経(HFnuRRI),交感神経(LF/HFnuRRI)に有意差は認めなかった。しかし、術1日目の仰臥位と立位間で、副交感神経(HFnuRRI)は有意に低下し,交感神経(LF/HFnuRRI)は有意に上昇している結果であった。その要因を重回帰分析にて解析した結果、全身麻酔薬と併用するプロポフォール使用量と手術Water balanceとの関連を認めた。本研究の成果を平成29年3月の日本集中治療医学会にて報告した。
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