研究課題
本研究は、不育症治療を受ける妊婦の母親役割獲得過程の促進を目指した看護介入プログラムの開発を目的とした。平成26年度はプログラム開発の基礎資料として、本邦における「母親役割」について概念分析を用いて明らかにした。平成27年度から、不育症治療を受ける妊産褥婦に対しインタビューと質問紙調査を開始し、妊娠初期、中期、後期、産褥早期、1か月健診まで縦断的に対象の心理的変化と母親役割獲得過程に関するデータ収集を行った。平成28年度は、前年度からのデータ収集を継続し、33名からデータ収集することができた。得られたデータから、不育症治療を受ける妊婦の妊娠初期の経験の本質について、現象学的アプローチを用いて明らかにした。不育症治療を受ける妊婦の妊娠初期の経験は、根底には常に流産に対する不安があり、不安から解放されたと思いながらも、それに反して更に不安に陥っていた。その不安から、自責感や緊張感が生じ、身体の変化に敏感になっていた。同時に、夫と不安を共有し、児への愛着を形成していた。また、過去の流産週数を越えると安心していた。これらのことから、流産経験が女性にとって抑圧されたものにならないような支援や妊婦健診後に児の成長を共に確認し、妊娠継続を実感できるような支援の必要性が示唆された。今後、不育症治療を受ける妊産褥婦への看護介入プログラムを構築する上で、妊娠への不安が特に強い妊娠初期での支援の強化や不育症女性における流産経験の受け止めを整理する支援の必要性が示唆された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Journal of the Tsuruma Health Science Society, Kanazawa University
巻: 40(2) ページ: 1-9
http://hdl.handle.net/2297/46827