小児医療の進歩により小児がんの治癒率は7~8割まで向上し、患児や親の心理・社会的問題にも注目が集まるようになった。小児がんの過酷な治療体験は、患児だけでなく親の不安や抑うつ傾向も高めることが知られている。特に幼児期から学童期には、入院治療を終えても復園・復学、きょうだいへの対応など様々な課題があり、医療を離れて子どもを支える母親に対し、レジリエンス(立ち直り力)を高める心理サポートが重要である。前向き子育てプログラム(トリプルP)は親の不安や抑うつを軽減し問題解決力や自己効力感を高めることが確認されており、レジリエンス促進を図るために有用な介入であると考えられる。そこで本研究では、退院後の小児がん患児の親のレジリエンス促進への示唆を得るため、トリプルPによる介入を行い、効果を測定することを目的とした。 小児がんの入院治療を終え、外来化学療法を行いながら復園・復学の移行期にある子どもの母親3名に前向き子育てプログラムを実施した。介入前と修了セッション後に質問紙調査を実施し①属性②子どもの強さと困難さ尺度(SDQ)③子育てスタイル尺度(PS)④抑うつ・不安・ストレス尺度(DASS)⑤育児関連レジリエンス尺度⑥自由記載について調査した。3事例ともに、SDQ、PS、DASSにおいて改善がみられたが、介入効果の持続や事例の拡大方法については検討が必要であると考えられる。28年度は本研究成果についての学会発表を行った。今後、論文投稿の準備を進めていく予定である。
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