研究課題/領域番号 |
26861922
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岩崎 三佳 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (70584176)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 文献検討 / 産科混合病棟 |
研究実績の概要 |
国内外の産科混合病棟に関する文献検討を行った。その結果1986年に感染の問題を指摘した論文のみで、海外においては医療システムの違いから日本の抱える問題と環境が異なることが導き出された。 国内に関しては医学中央雑誌、J Dream Ⅲ(JST Plus)、CiNii ArticlesにてKey termを「産科」「混合病棟」とし2004年1月~2014年12月までの10年間の文献を検索した。重複した文献や産科混合病棟に関連しない文献等を除き、37の文献があった。研究対象となっているものは、助産師を含む看護職が最も多く22件、次いで新生児を対象としたものは5件、褥婦を対象としたものは、2件、入院患者を対象としたもの2件、施設を対象としたもの1件、母子を対象としたものは1件、その他3件となっていた。研究内容の変遷としては、2004~2007年までは、看護職者によるケア不全感や業務管理や、新生児に対する感染の問題、産科病棟で発せする音(新生児の声)による他科の患者への影響など、混合病棟で生じている問題を報告するという傾向であった。2008~2010年の傾向は、新生児に対する感染の問題は引き続き報告され、さらに助産師のストレスマネージメントや全国の産科医療の現状についての報告などがなされていた。2012~2014は看護職者や看護管理者の業務管理に関しての現状報告や解決策として日本看護協会が主体となって提言しているユニットマネージメントの作成やその導入に関しての文献が2013、14年を中心に急激に増えている。これらのことから産科混合病棟を取り巻く状況として、母子のケアの不足、新生児に対する感染管理、業務管理、人員の管理が問題として挙げられおり、またこれらの問題は地域特性にも影響を受けていることが明らかになった。 産科混合病棟の現状をふまえて、産褥期の看護の質を測定する質問紙を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在の進捗状況として、文献検討を行いその成果に関して国際学会での発表を行い、現在国内紙への投稿準備を進めている。全体の進捗状況からは、看護職側の調査が終わっていないので、やや遅れているといえる。 今年度の調査が遅延した理由として、文献検討の結果から、地域を限定せずに調査を行って俯瞰した上で、地域特性(当該地域における産科医療における医療資源のレベル)を明らかにしたほうが、産科混合病棟の特性が明らかになると考えたからである。 調査用紙に関しては、前年度の文献検討をもとに作成した。しかし調査範囲を広げることに関して、追加の倫理審査が必要になるため、現時点で修正の手続きを進めている。また現時点で準備できる内容として、後納郵送の手続き、研究補助のリクルート等、研究を効果的に進めるための、事務手続きを進めている。現時点での懸念事項としては、全国調査にした場合、平成28年4月に熊本・大分で生じた地震の影響を受けることがあげられる。この問題に関しては、当該地域の復興状況に合わせて、時間をずらし依頼することや、調査期間を本課題の許す範囲で延長をすることによって対応することを予定している。 また、今年度予定していた、新生児・褥婦に対する調査に関しては、近隣の施設でインタビューによる調査を予定していたが、看護職の調査と同様に地域特性を考慮した調査が必要であると考えた。現時点で内諾を取れている施設もあるが、地域特性を考慮して、今後対象範囲を広げる必要があると考えており、現時点でも対象のリクルート活動を続けている。このことにより看護職者の情報とあわせやすくなり、地域特性といった文化社会的側面を含めた産科混合病棟の現状に関して、考察を深めることができることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、文化・社会的視点を含めて産科混合病棟における正常新生児ならびに産褥期の看護に関しての実態調査を行う。現在看護職者側に関しては、調査の準備段階がほぼ終わっており、順次調査を開始して行くことになる。進捗状況に影響しうる要因として、平成28年4月におきた地震による被害の影響が考えられるが、調査時期等を調整することによって、対応する予定である。 看護職側の調査結果の分析は、Donabedianの医療の質評価の3つの概念枠組みを用いて行う。構造指標としては病棟の診療科の混合状況や人員配置や看護システムを明らかにし、診療科が混合していることによって看護職の配置方法や産科混合病棟に応じたシステムの運用について分析を行う。過程指標としては「医療機関における助産ケアの質評価 第2版」をもとに作成した、質問紙を用いて、正常新生児・産褥期の対象に対して提供している看護の特性について分析を行う。評価指標としてはインシデント・アクシデントの有無を基に安全性に与えている影響を分析する。また自由記載欄などを活用して現在産科混合病棟にて勤務をしている看護管理者や看護職が日々感じている問題点や困難について質的なデータを収集することによって、既存の指標に頼ることなく産科混合病棟の現状について分析を行う。 また看護の受ける側である、褥婦が受けている看護ケアをどのように受け止めているのかについて質的に分析をする。これらの分析結果を地域別に比較して、地域特性が影響しているのかを分析する。また可能であれば、医療職者が地域特性等をどの様に認識しているのかについて質的データから分析が可能であれば導き出す。看護者側と褥婦側双方から産科混合病棟の看護体制に関して総合的に分析することによって、最終年度として看護の質を担保するための人員配置の要因を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額が出た理由としては、調査内容の変更によるものが大きい。予算立案時に今年度の執行に関しては、看護職側の調査に関連する予算を計上していた。しかし今年度の研究成果を踏まえて、研究目的を達成するためには、研究方法を修正する必要性が生じた。本年度内での実施を目指していたが、事務手続き倫理審査等当初の計画より遅れが生じた。 このことにより、本年計画していた調査は実施しなかったため、それらに関連する予算の執行が行われなかった。研究目的を達成するために、適正な研究費の使用を行う為に、次年度への繰越を選択した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度使用できなかった金額に関しては、次年度実施する調査に関連する費用として利用する準備を既に進めている。次年度に繰り越した調査で必要になってくるものとして、看護職側に行うアンケート調査を行う為の通信費やそれらに関連する事務用品、褥婦に対して行うインタビュー調査を行うためフィールドとの調整やデータ収集のための交通費、データ入力等の依頼に関連する人件費が生じることが予想される。 研究計画を変更していることによって、当初立案した予算案と異なる部分も生じているが、研究を適切に進捗させる様調整する。次年度配当される金額と合わせて、適切に運用ができるように心がける。
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