本研究の目的は、10代で出産する女性が産後一年間の育児を通じて母になるプロセスと、育児中に抱える困難および彼女たちが有する強みを、質的・記述的に明らかにすることである。本研究を通じて、10代で出産した女性たちの現状とニーズに即した、より良い支援方法を考察することを目指している。 平成29年度は、前年度に引き続き研究参加者へのインタビュー調査を行い、インタビューデータより逐語録を作成した。その後、作成した逐語録を精読し、今年度は主に研究参加者が出産後1年経過した時点でどのような経験をしているのかに焦点を当て、語られた内容の類似性・相違性に着目しながらカテゴリー化を進めた。分析の結果、10代で出産した女性は、出産を機に、学校・職場・居住地等の環境やパートナーとの関係性が変化していた。そして、彼女らはそうした変化を受け入れながら、新たな環境において「母親である自分」として身を置いていた。さらに、出産直後の時期においては不安として認識されていた日々の児の変化は、時間の経過とともに、児の成長を実感する契機や育児をする中での喜びとして認識されるようになっていた。また、家族からの育児支援がもっとも心強いものとして認識されていた一方で、どれだけの育児支援が得られるのかは各家庭の状況によって差が生じており、パートナーに対しての保健指導や、同世代の母親同士で交流する機会を求める者もいた。育児をするすべての者とその子どもが健やかに暮らせるよう、公的資源の拡充と、既存の枠組みにとらわれない支援の必要性が示唆された。
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