研究課題/領域番号 |
26861930
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研究機関 | 岐阜県立看護大学 |
研究代表者 |
山本 真実 岐阜県立看護大学, 看護学部, 講師 (90710335)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障がい / 子ども / 家族 / 語り / ナラティブ / コミュニケーションの障がい |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①自閉症スペクトラム障がい(以下、ASDとする)のある子ども自身が語るASDの意味を明らかにすること、②家族が語るASDの意味を明らかにすること、そして③ASDについて“語ること”が、子どもや家族にとってどのような経験であるかを明らかにし、④子ども自身や家族自身がASDを“語ること”に焦点をあてた看護者の関わりを提案することである。 平成26年度には、ASDのある人々の語りを取り上げた国内文献レビューを行い、研究参加者のリクルート、子どもへの個人インタビュー、家族へのインタビューを実施した。 国内文献レビューの結果、子どもの語りを取り上げた文献、一般的なASDという言葉の意味(例えば、コミュニケーションの障がいなど)にとらわれず子どもの経験を理解した文献は非常に少ないことがわかった。本研究が、子どもと家族の新たな理解や、子どもと家族への新たな関わりの検討に役立つことが示唆された。 研究参加者のリクルートは、子どもの発達に不安を抱える家族とその子どもが活動する自主グループにて実施し、子ども7名(8歳~16歳)、家族7名が本研究に参加した。ほとんどの子どもがASDに総称される診断を受けており、一部、診断は受けていないが、母親がASDだと感じている子どもを含んだ。診断名を伝えられている子どもはいなかった。子どもへのインタビューは、全ての子どもに対し2回、1回20分~90分程度で実施し、子どもからみた自分自身、他者と話すことへの気持ち、日頃感じている困難さなどが語られた。またインタビューによる対話は、子どもにとって有意義な経験であることが示唆された。家族へのインタビューは、各家族員に対し1回、60分~120分程度で実施し、ASDという言葉への新たな意味が語られた。インタビューによる対話は、家族にとって子どもの新たな一面に気づく機会となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の研究実施計画では、研究目的①“自閉症スペクトラム障がい(以下、ASDとする)のある子ども自身が語るASDの意味を明らかにすること”、研究目的②“家族が語るASDの意味を明らかにすること”の達成を目標としていた。研究参加者のリクルート、データ収集(子どもへの個人インタビュー、家族へのインタビュー)は、研究実施計画どおりに実施できたが、インタビューにおける対話のありようが多様であったことや、幅広いデータが収集されたことから、データの本質を見極め、分析の方向性を定めることに時間を要した。このため、研究目的①および研究目的②については、平成27年度にも検討を続ける必要があり、研究参加者に分析内容への意見を求め、追加データを収集しながら分析を深め、研究目的に迫る。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、事例ごとの分析、事例の統合により分析を深め、研究目的①②を明らかにする。また平成26年度に得た示唆から、子どもと家族にとって“語ること”がどのような経験であったか(研究目的③)についても明らかにし、“ASDのある子どもが自分自身について語ること”や“家族がASDと診断された子どもについて語ること”に焦点をあてた看護者の関わりを検討する。本研究について報告書をまとめ、関連学術集会や学術雑誌などで結果を報告する。 本研究に参加者した子ども達には、診断名を伝えられている者はいなかった。一般的なASDという言葉の意味にとらわれず、子ども自身が語る自分自身を理解するという本研究の目的から、研究参加者である子ども達に診断名を伝えられていないという状況は重要であったと考える。このため、研究目的①“自閉症スペクトラム障がい(以下、ASDとする)のある子ども自身が語るASDの意味を明らかにすること”については、子どもへの個別インタビューにて、ASDそのものを話題にするのではなく、ASDとされる子ども自身が“自分自身をどのように語るか”という視点から分析を進め、明らかにすることとした。また複数の家族員による家族インタビューの実施は困難であり、家族員への個別インタビューとして実施した。個別インタビューであっても、各家族員の語りから、様々な意味が語られており、研究目的には迫ることができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、データ分析に時間を要し、分析内容への研究参加者の意見を聞くこと、追加データの収集、それらに基づく分析内容の修正はできなかった。このため、研究参加者の意見を聞くためのインタビュー、追加データの収集のためのインタビュー等に必要となる費用は次年度使用額となった。またこれに関連し、研究参加者への謝品の購入は次年度購入することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には、研究参加者への意見を聞き、追加データの収集を行う予定であり、研究参加者への意見を聞くインタビュー、追加データ収集のためのインタビューに必要な費用を支出する予定である。これに合わせて研究参加者への謝品も購入する。また平成27年度は、研究成果を学術集会や学術論文にて報告するため、学術集会参加・学術論文作成に必要となる費用を支出する予定である。また本研究テーマに関連する学術集会にも参加する。研究結果報告書の作成や郵送に関する費用も支出する。
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