本研究は,長期フォローアップ外来において,学童・思春期,あるいは成人に達した小児がん経験者を対象に行われている健康教育の現状を明らかにし,小児がん経験者や家族のニーズに沿った健康教育プログラムを開発することを当初の目的とした。 若年成人期の小児がん経験者の健康行動に関し家族を対象とした面接調査より、同年代の人と同様のライフスタイルを望んでいることが分かり、小児がん経験者の喫煙・飲酒量等の健康行動の詳細を把握し、不健康行動について振り返りができる機会の提供が必要であることが示唆された。 平成29年度は、小児がん経験者の喫煙・飲酒行動について焦点をあて文献検討を行い、学会発表をした。また、若年成人期の小児がん経験者の比較対照群となる「大学生・大学院生のライフスタイルに関する実態調査~アセトアルデヒド脱水素酵素2表現型(ALDH2)と心理社会的要因との関連に焦点をあてて~」を、5つの大学の協力を得て実施した。その結果、2244部(回収率は65.2%)の調査票を回収した。平成30年度は、若年成人期の小児がん経験者の比較対照群の特性を明らかにし学会発表を行った。若年成人期の20歳以上35歳未満の大学生と大学院生に,基本属性,自宅やクラブでの飲酒量と飲酒頻度,問題飲酒,飲酒の無理強い等を調査した。フラッシング反応はAlcohol Sensitivity Screening Test(ALST)を用いてFlushersとNon-flushersに分類した。Non-flushersは高頻度多量飲酒,問題飲酒であり,飲酒嗜好やストレス発散で飲酒していた。Flushersは飲酒を無理強いされた経験,無理強いを断れない経験が高率であり、若年成人期は環境影響による多量飲酒のリスクが高い。小児がんサバイバーにおいて今後実態調査を継続し、サバイバーへの遺伝素因を含む飲酒教育が急務である。
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