研究課題/領域番号 |
26861952
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小岡 亜希子 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50444758)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高齢者 / 経管栄養 / 排便 |
研究実績の概要 |
本研究は、療養病床に入院する65歳以上の高齢者のうち、経管栄養法により栄養を補給している者の排便状態の実態と、排便状態に関連する要因を明らかにすることを目的とした。対象は、A県内の療養病床に入院し、経管栄養法を受ける65歳以上の者のうち、経管栄養法を開始して6週間以上が経過している者とした。期間は、2014年4月~2015年1月。方法は、対象者の背景および身体状況に関する項目、経管栄養法に関する項目、および排便状態に関する項目を調査票に基づいて研究者がカルテより転記し、不明な点はスタッフに聴取して情報を得た。 結果、性別は男性24名、女性30名で、平均年齢は80.5±7.4歳であった。NMスケールの平均得点は7.96±12.60、N-ADLの平均得点は0.44±2.14と認知機能、ADLともに低い状態であった。経管栄養法は、胃ろうを造設している者が36名(66.7%)おり、使用している経管栄養剤の種類は47名(87.3%)が液体半消化態栄養剤を使用し、半固形栄養剤を使用している者は6名(10.9%)であった。排便状態の実態では、3日以内に1回以上排便があるものは41名(75.9%)で、4日以上みられない者は13名(24.1%)であった。便の形状は下痢している者が37名(68.5%)と高率であった。下剤を使用している者も、44名(81.5%)と多く、ほぼ全員がオムツに排便していた。下痢に関連する要因を分析した結果、下痢している者のほうが有意に年齢が若く、NMスケールの得点は有意に低かった。栄養剤による影響を検討した結果、下痢している者は有意に液状栄養剤を使っている者が多かった。経管栄養をうけている者は、3日以内に排便を認めながらも下痢している者が多く、下剤を使用して下痢している者が少なくないと考えられる。下痢症状の改善のために、半固形栄養剤の使用は有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は、経管栄養をうける高齢者の排便状態の問題を正しく把握するために、経管栄養剤と排便状態の実態を把握するための質問紙調査を実施した。調査票の作成については、関連要因を明らかにするために、対象者の背景および身体状況に関する項目、経管栄養法に関する項目、および排便状態に関する項目とし、過去の研究を参考にしながら作成した。調査は、記入の漏れや記入者による判断の差がないように、研究者が施設に出向き、カルテより転記した。カルテに記載のない項目や、不明な点についてはスタッフに直接尋ねて情報を得た。 現在、54名の対象者の情報を得ることができており、その実態を第20回老年看護学会で発表する予定である。しかし、対象者を増やす必要性を考えており、現在も引き続き調査を続けているのが現状である。そのため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在26年度の調査を継続し、140名まで調査を終了している。今後はそれらのデータを分析し、療養病床に入院する65歳以上の高齢者のうち、経管栄養チューブや胃ろうを増設して栄養を補給している患者の、排便状態の実態を把握し、排便状態に関連する要因を明らかにする予定である。そしてその結果を論文投稿する予定路している。 さらに、27年度は、液状栄養剤から半固形化栄養剤への変更により、排便状態が改善した事例における看護師へのインタビュー調査を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、全国の療養病床に入院する経管栄養法を実施している高齢者を対象にアンケート調査を行う予定であった。しかし、アンケートに記入するスタッフにより、排便の状態に関する項目や患者のADLに関する項目に判断の違いがうまれることで正しくデータが回収できないと判断したしたため、研究者自身が施設に出向いて直接カルテからデータを収集する方法を選択した。そのため、アンケートの郵送費用や印刷費用が大幅に変更された。さらに、購入予定であった統計ソフトが、年度末にバージョンアップされることが確認されたため、購入時期を次年度にまわすこととした。 以上のことから、次年度使用額が生じる結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は、26年度に購入予定であった統計ソフトを購入する予定である。さらに、下痢の改善のために半固形栄養剤を積極的に取り入れている施設のスタッフにインタビュー調査に出かける予定としている。
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