研究課題/領域番号 |
26861954
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
藤本 裕二 佐賀大学, 医学部, 助教 (30535753)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 精神障害者 / リカバリー / 地域生活 |
研究実績の概要 |
本年度は,地域で暮らす統合失調症者102名を対象にリカバリーの特徴及び背景項目との関連について検討した。リカバリーは,リカバリーステージを5段階(モラトリアム期,気づき期,準備期,再構築期,成長期)で評価するSelf-identified stage of recovery(SISR-A),リカバリーレベルを評価する24項目版Recovery Assessment Scale日本語版(RAS)2つの尺度を用いた。まず,リカバリーステージ別にRAS得点を比較したところ,モラトリアム期(71.6点)から成長期(96.0点)にかけて高くなっていたが,準備期(80.5点)で一旦低下する特徴がみられた。準備期は,リカバリープロセスの中でも理想と現実に直面し,揺れ動きやすいことが推察された。次に,RAS得点を背景項目別(性別,年齢,発症年齢,副作用の有無,就労状況,地区行事への参加状況,病気体験で得られたこと)に比較した。その結果,地区行事への参加者(p<0.026),ピアサポート経験者(p<0.010)は無群に比べてRAS得点が有意に高かった。また,病気体験により得られたことがあると回答した人のRAS得点も無群に比べて有意に高かった(p<0.000)。地区行事への参加は,社会からの偏見を払拭し,社会に対する信頼回復の契機となっていることが考えられる。また,ピアサポートの要素を取り入れた支援や介入プログラムを行うことで,リカバリーがより促進されることが考えられる。さらに,リカバリーにおいて,病気を自己の人生の中で意味ある体験に変えることが肯定的な人生観へと繋がっていることが推察される。 次年度も,継続して調査を実施し,地域で暮らす精神障害者のリカバリーと主観的特性との関連について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年度に調査できなかった離島(長﨑県)の調査を実施することができた。今後も対象地域や対象者を増やし,リカバリーと主観的特性との関連について検討することができると考えている。交付申請書に記載した研究計画・実施スケジュール通りに研究を遂行できているため,現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して,デイケア,訪問看護,就労支援事業所関連の施設,地域活動支援センター等を利用しながら地域で暮らす精神障害者300名程度を対象に自記式質問紙調査票による調査を実施し,リカバリーと主観的特性との関連について分析を進めていく予定である。引き続き,精神保健看護学分野を専門とする教員2名で調査場所へ出向き,対面による丁寧な聞き取り調査の方法を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,リカバリーフォーラムへ参加することができなかったこと,離島等の調査地域の偏りにより対象施設が少なかった。そのため,本研究を遂行する上での学会参加費,旅費,調査に必要な物品購入費等が減ったことにより研究計画書で計上した予算額と実支出額に誤差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,本研究課題に関連深い学会等で研究の成果を公表する予定であり,旅費及び学会参加費が必要である。また,次年度も調査対象施設を増やす予定であり,調査の打ち合わせ及び調査旅費,調査に必要な消耗費の補充を行う。物品については,可能な限り研究者が所属する既存設備を利用する。
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