本研究の目的は,地域で暮らす精神障害者のリカバリーと主観的特性との関連を明らかにすることである。地域で暮らす精神障害者281名を対象にアンケート調査を実施し,264名(有効回答率94.0%)を分析対象とした。調査項目のリカバリーは24項目版Recovery Assessment Scale日本語版(RAS)用いた。関連要因は,個人属性及び病気に関する項目,主観的特性(楽観性尺度,日本語版Health Locus of Control;HLC,精神障害者の地域生活に対する自己効力感尺度;SECL,薬に対する構えの調査票;DAI-10)とした。 分析対象者のうち,男性152名(57.6%),平均年齢は46.9±13.4歳であった。発症年齢は26.5±11.0歳,平均入院回数3.4±3.2回,病気の体験によって成長や何か得られたことがあると回答した人は188名(71.2%)であった。RASの平均合計得点は81.7±15.7点であった。楽観性尺度【前向きさ】平均得点は15.3±3.7点,【気楽さ】平均得点は14.8±5.0点であった。HLC平均得点は38.3±5.2点,SECL平均得点は129.5±30.1点,DAI-10平均得点は3.8±4.5点であった。RASを応答変数とし,RASと関連がみられた「年齢」,「入院回数」,「楽観性【前向きさ】」,「楽観性【気楽さ】」,「HLC」,「SECL」,「DAI-10」,「病気体験によって得られたこと」の8項目を説明変数として,Stepwise法を用いた重回帰分析を行った。その結果,「SECL」,「楽観性【前向きさ】」,「楽観性【気楽さ】」,「HCL」の4つがリカバリーに有意な影響力を持つ変数として採択され,自由度調整済みR2は0.577であった。 リカバリーレベルには,個人背景(性別,年齢等)や病気の側面ではなく,個人の主観的特性が重要であることが示唆された。今後,リカバリー向上を目指した支援方法を検討する上で,精神障害者の心理面に焦点を当てた介入プログラムが不可欠である。
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