研究課題/領域番号 |
26861955
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
森 万純 大分大学, 医学部, 助教 (60533099)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 身体抑制 / 急性期病棟 / 高齢者 / 看護のモデル化 |
研究実績の概要 |
本研究は、一般病院急性期病棟に入院する「高齢患者に対する身体抑制ゼロ」に向けた看護のモデル化を行うことである。平成26年度は身体抑制を最小限にする看護を行っている一急性期病棟の看護実践および看護管理の実際を明らかにすることを目的とし、質問紙調査と参加観察を実施した。 質問紙調査は、常勤看護師25名を対象とし無記名自記式(留め書き法)にて実施した。調査項目は、ミトンやひも状抑制実施の判断、抑制解除の判断等である。調査票の回答数は22名(回収率88.0%)であった。5割以上の看護師が「転倒・転落のリスクがある」「徘徊する」「転倒・転落の既往がある」「混乱して周りに迷惑をかける」「せん妄の既往がある」「失見当識がある認知症を有する」だけでは、抑制はしないと回答した。一方、実施の判断が二分される状況は、「看護師や他患者に身体危害を加える」「ルート類の自己抜去歴がある」「安静の必要があるが、頻回に離床する」「スタッフの人数不足」「状況的に必要ないが医師の指示がある」だった。しかし、9割が「生命にかかわるルート類の挿入」では、検討した上で慎重に実施すると回答した。また、7割が「生命にかかわるドレーン類の抜去」「精神状態の改善、全身状態悪化によるレベル低下」の場合、抑制の解除を検討していた。「抑制実施によるストレスの増強」「認知症の症状やせん妄の悪化」「抑制の長期化」も解除を検討する要因の一つであることが示された。 参加観察の対象は、認知症により現状の理解が難しくかつ胃瘻造設直後で瘻孔未形成の80歳代男性と急性肺障害により酸素療法の必要性が高いが酸素マスクを再々外すことにより、酸素化がはかれない90歳代女性の2名だった。看護師は患者の全身状態をチームで情報共有し、切迫性や一時性の原則にそって抑制実施や一時的な解除の検討、二次障害予防のためのケアを数日おきにカンファレンスで検討していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、一般病院急性期病棟に入院する「高齢患者に対する身体抑制ゼロ」に向けた看護のモデル化を2年間で行う予定である。しかし、第1段階の看護ケアチームの特性を知るための質問紙調査および参加観察調査内容の修正に時間を要した。そのため、平成26年度中に第2段階の看護モデルの試案を作成するまでに至らなかった。以上のことから、研究全体の達成度は、やや遅れている。 現在、当初の研究計画に間に合うよう、臨床現場の協力を得ながら取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、一般病院急性期病棟での「高齢患者に対する身体抑制ゼロ」に向けた看護のモデル化を目指し、第3段階で研究を進めている。平成27年度は、引き続き参加観察と研究者および高齢患者のケアを行っている医療従事者で一事例ずつフォーカス・グループインタビューを行い、事例検討をすすめる。さらに、第2段階の急性期病棟での高齢患者への身体抑制ゼロに向けた看護のモデル試案の作成、第3段階の看護モデル試案の実行可能性を明らかにするために国内の一般病院急性期病棟に勤務する看護師を対象とした質問紙調査を実施する予定である。
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