研究実績の概要 |
わが国の要介護高齢者数は急速に増加している一方で,家族の介護・看護のために離職する者が増加し社会的問題となっている.先行研究から,就労しながら介護を行っている女性は,要介護高齢者が日中ひとりで過ごすことによって起こり得る問題を心配しているが,仕事と介護を両立するためのセルフマネジメントを行い安心感を得ていた.また,男性介護者は心身の健康に対する主観的健康感が低く,回避型コーピングをとらない傾向があることが示唆されている.そこで本研究では,就労しながら日中独居の要介護高齢者を支える男性介護者の仕事と介護の両立のためのセルフマネジメントについて明らかにすることを目的とした. 本研究では,就労しながら要介護高齢者を介護をする男性介護者(以下,就労男性介護者)9名に半構成的面接調査を行い,質的記述的に分析した. その成果として,以下が明らかになった.① 就労男性介護者は日々の生活に追われ,心身の負担を抱えている.② 介護者の就労によって,要介護高齢者がひとりになるため,不測の事態が起きないかという不安を抱えているが,サービス提供者や職場の理解などフォーマル・インフォーマルなサポートを受けて安心感を得ている.就労男性介護者は,インフォーマルなサポートより,第三者である専門職によるフォーマルなサポートに任せる方が安心できる傾向がある.③ 就労男性介護者は,要介護高齢者に住み慣れた家での生活をできるだけ元気で過ごしてもらうことを望んでいる.④ 男性介護者は就労による社会的な地位が高く,自営業を運営している場合が多い.男性介護者は就労を継続することを単に経済的理由だけでなく,自己の存在意義,楽しさを感じており,仕事と介護の両立への意欲となっている.⑤ 就労男性介護者は,仕事によって介護から離れられる時間を確保することで,心身のストレスが緩和され,心の安定が図られている.
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