研究の全体構想は、精神看護全体に共通する、精神看護場面における対人状況の理解のための立体概念モデル構築と、精神看護学分野で扱う視覚的な教材開発である。 本研究の具体的な目的は、次の1から3である。1.1つの精神科病棟内の看護師を対象に、境界性パーソナリティ障害(以下BPD)患者の行動化へのチームとしての対応方法を、インタビューから質的記述的に分析し、先行研究で構築したモデルを元に概念モデル化する。2.複数病院の看護師10名程度を対象に、BPD患者の行動化への対応方法をインタビューから質的記述的に分析し、概念モデル化する。3. 1・2の結果から、BPD患者の行動化に対する、看護場面での対人状況を概念モデル化する。 平成27年度は目的2.である複数病院の看護師6名にインタビューを行った。平成28年は、それに加えて4名のインタビューを行い、合計10名を対象に、BPD患者の行動化に対する対応方法を逐語録から質的記述的に分析した。その結果、BPD患者の行動化に対する対応方法は≪心理的距離を保ちながらやり取りをする≫ ≪行動化を予測しすぐに対応できる態勢を整える≫≪枠組みを用いて対応する≫ ≪コントロールされていると自覚しながら身体的な危機に介入する≫≪患者の思いを受けとり素直に応答する≫ ≪自分で行動化責任をとれるように安全な環境を整える≫≪気持ちを言語化できるように促す≫≪行動化している感情を受け止め安心感を提供する≫ ≪看護師に負担がかからないような対応をする≫ ≪チームの関係性を保つための対応をする≫≪他患者への安全を優先した対応をする≫ の11のカテゴリーが抽出された。
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