研究実績の概要 |
認知症を持つ人の介護者は、認知症の症状である中核症状や行動・心理症状に負担を感じ、他の介護者と比較して介護負担感が高いことが報告されている。また、介護をする労働者の精神的健康は、介護をしていない労働者と比較してストレスが高く、抑うつ症状をきたしやすい。しかし、認知症を持つ人を介護する労働者の介護負担感と労働生産性との関連を検討した研究は我が国ではほとんど知られていない。そこで本研究は、介護者・被介護者の属性、介護の状況を調整して介護負担感と労働生産性との関連を明らかにするとともに、これらの関連に及ぼす仕事の特性の緩衝効果を検討することを目的とした。社会調査の登録モニターのうち、身内に「認知症」で介護を必要とし、自身がその人の介護を行っている20歳以上の労働者34,800名を対象にウェブ調査を実施し、先着で回答した379名(男性274名、女性105名)を解析対象とした。分析は、介護負担感と労働生産性との関連を明らかにするために、労働生産性を従属変数とした階層的重回帰分析を実施した。さらに、結果が有意であったものについては、交互作用効果について下位検定を行った。その結果、介護負担感と労働生産性との間に有意な正の関連がみられた。また、仕事の特性のうち同僚のサポートは、介護負担感と労働生産性との関連に対して、緩衝効果があることが示された。本研究より、認知症を介護する労働者の介護負担感が高いほど、労働生産性が低下することが明らかとなった。
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