研究実績の概要 |
超高齢社会において、病状が重症化しやすく長期化しやすい高齢者の健康や人生の質(Quality of Life, QoL)を維持するためには、誤嚥性肺炎の原因となる嚥下障害に対する予防的な看護介入が重要である。本研究では、嚥下機能障害に対する効果的な看護介入に関するエビデンス(科学的根拠)を実証的に確認するために、下記3点に取り組んだ。 第一に、適切なアウトカム指標の選択のために、双生児研究法を用いて、各指標における遺伝・環境要因構造を検討し、適切なアウトカム指標の選択に資する検討を行った。これは既存の嚥下機能の評価指標が、嚥下に関する身体機能(筋力、嚥下反射等)の要素(遺伝要因)と、食物そのものの嚥下しやすさに関連する要素(環境要因)との複合的評価を整理するためである。 第二に、実用性に向けた、より確実で簡易なスクリーニング方法の探索を行った。質問紙票調査のような主観的データと、血液検査や反復嚥下テストなどの客観的データとの遺伝的交絡の有無を検討し、遺伝的な関連を明らかにするための分析を行った。 第三には、実際にどのような介入(すなわち環境要因)が嚥下機能の向上に影響するのかを検討した。本研究においては成人の一卵性双生児ペアを比較し、遺伝要因の交絡を調整してもなお、嚥下機能と有意に関連のある環境要因を探索している。 第四には、嚥下リハビリテーション(上半身の運動療法)を双生児の対象者に実施してもらい、遺伝的な交絡を考慮しても介入効果があるかどうかを調査し分析に当たった。 3年間を通して、嚥下スクリーニング指標における遺伝・環境要因の及ぼす影響の度合いを明らかにし、唐辛子や胡椒の刺激(環境要因)が嚥下機能へ及ぼす影響について明らかにした。また介入研究においては、嚥下リハビリテーションの効果やアドヒアランスに関する遺伝・環境要因の影響を明らかにした。
|