本研究の調査対象地域である東ケニアの辺縁地域には、5歳未満児の貧血が46%程度、慢性的低栄養状態により低身長を呈する子供が35%程度存在することがこれまでの調査から明らかになっている。本研究の目的は、出生時から満2歳までを追跡する出生コホートを展開し、1) 地産地消の食品を使用した好ましい食事パターンを特定し、かつ2) その食事パターンについて食事指導をベースとした看護職主導の栄養改善プログラムを開発することである。平成26年度は、ケニア国内での調査許可を得るための倫理審査申請を行い、Kenya Medical Research Institute (KEMRI SSC No.2820)、長崎大学熱帯医学研究所(承認番号 140227120)にて承認が得られた。また、調査地域の選定および対象者の初期登録を行い、長期追跡のための調査基盤を構築した。同時に、栄養調査にかかる食事摂取頻度調査票を新たに作成、スマートフォンで動作するデータ収集プログラムを開発し、予備調査を実施した。平成27年度は、平成26年度に引き続き対象者の登録および長期追跡のための調査基盤構築を行い、食事摂取頻度調査を2回、24時間思いだし法での食事調査を3回実施し、食事摂取頻度調査票の妥当性を検討・食事パターンを特定するためのデータ収集を行った。対象者の身体測定(身長・体重)、ヘモグロビン値、寄生虫感染の有無、社会経済状況に関する調査もあわせて実施している。現在、平成29年度までに実施した食事摂取頻度調査、24時間思いだし法での食事調査、身体測定(身長・体重)の結果を分析し、食事摂取頻度調査票の妥当性を検討中である。さらに、貧血および慢性栄養失調に影響する寄生虫感染の有無、社会経済状況の影響等を調整した上で、貧血および慢性栄養失調に対して予防的な働きをする食事パターンを特定し国際誌への公表を行う予定である。
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