研究実績の概要 |
本邦での結核治療方策として用いられるDirectly Observed Treatment, Short-Course (DOTS:直接監視下短期化学療法)は、保健師または看護師による患者の治療中断リスクに応じた段階的な3ステージのDOT(Directly Observed Treatment:直接服薬確認)プログラムからなる。DOTSを受療する結核患者のノンアドヒアランスのリスク要因を検討することを目的とし、国内都市部の32か所の保健所に依頼し、DOTS受療する結核患者を対象として,横断記述調査を実施した.測定変数は服薬アドヒアランス,人口学的特性,疾患及び治療に伴い生じる特性,DOTSによる服薬療養支援の認識とした.分析は,対象概要の記述のほかロジスティック回帰分析を用いてノンアドヒアランスの要因を検討した.倫理的配慮として,研究倫理審査委員会からの承認を得て、対象者の同意を得て実施した.その結果、対象者127人は,年齢63.3±15.8(22-90)歳,98人(77.2%)が男性であり,観察されたノンアドヒアランスの患者は31(24.4%)であった.ノンアドヒアランスのリスク要因は,治療開始後の体調変化における‘悪くなった’(OR: 10.36, 95%CI: 2.36-45.49),及び‘変わらない’(OR: 3.58, 95%CI: 1.17-10.96), また関係者と‘連絡がとれない’ (OR: 3.53, 95%CI: 1.11-11.21)として抽出された.DOTSを受療する結核患者のノンアドヒアランスを防ぐためには,身体状況の医療的管理および‘連絡がとれない’を防ぐためのケアシステムの改善が必要と考えられる.
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