研究課題/領域番号 |
26861990
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
祝原 あゆみ 島根県立大学, 看護学部, 助教 (50533824)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 保健師 / 自然災害 / 備え / 保健師基礎教育 |
研究実績の概要 |
本研究は、保健師に求められる自然災害への備えについて多角的に検討し、平常時の保健活動に取り入れていくための方策を探ることを目的とする。 平成26年度は、平成25年に豪雨災害を経験した1自治体の保健師と、被災自治体を管轄する保健所の保健師を対象としたインタビュー調査を実施した。当初、保健師への調査は被災した自治体の保健師を対象とした個別インタビューを計画していたが、当時の被災状況および支援活動状況について情報収集した結果、管轄保健所保健師による強力な支援があったことが分かった。健康危機管理対応の拠点となる保健所の保健師からより多角的な視点でのデータが得られると考え、調査対象に追加した。また、被災後1年以上が経過しての調査となることから、当時を想起しやすく互いの発言の促進を図りやすいグループインタビューが適切であると考え、保健師同士で今後の災害への備えについて再確認することも期待し、被災自治体保健師5名、管轄保健所保健師5名の参加を得て、所属別にグループインタビューを実施した。 被災自治体保健師のインタビューからは、自然災害に対する備えは特にしていなかった中で感染症対策の備えが役立ったこと、保健師以外の職員とも協力しながら被災直後の混乱を乗り切ったこと、保健所をはじめ日頃から関わりのある関係者・機関の協力により支援活動を進めることができたこと等が語られた。保健所保健師からは、市町村と保健所の良好な関係が役立ったこと、保健師同士のコミュニケーションの重要性、統括保健師の存在の必要性等が語られた。日頃からの関係性や活動状況が災害時に活かされたと推測される一方、経験年数5年未満保健師であっても、保健師養成課程で学んだ内容は実際の状況下では思い出せなかったという意見が大半であった。「日頃からの備え」に保健師基礎教育のあり方も含めて検討する事が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成26年度に実施した保健師へのグループインタビュー調査の分析ができていないこと、保健師を対象とする調査とともに計画している被災自治体職員を対象とした調査がまだ実施中であること、2年間の研究期間中に被災自治体2か所への調査を予定しているが、まだ1か所目が終了せず2か所目に取り掛かることができていないことから、当初の研究計画から遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、保健師へのインタビュー調査と被災自治体職員への調査を計画している。 被災自治体職員を対象とした調査については、当初は防災担当課職員を対象とした個別インタビューを予定していたが、平成26年度の保健師への調査結果から、まずは日頃から保健師の活動を客観的に見ることができる保健医療福祉担当課の職員への調査が必要と考えた。また、事務職員からはアンケートの方が協力を得やすいと考え、保健師にグループインタビューを実施した自治体の保健医療福祉担当課職員を対象とした自記式質問紙調査を実施しているところである(平成27年5月現在)。 これまでの研究成果から、特に市町村保健師の災害への備えを検討する必要があると考え、保健所保健師や自治体の保健医療福祉担当課職員に対する調査データと合わせて分析し、市町村保健師の自然災害への備えのあり方について考察したいと考えている。また、複数の被災自治体への調査を実施し、結果の一般化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた個別インタビューをグループインタビューや質問紙調査へ変更したために被災自治体へ出かける回数が減ったこと、研究が遅れており、2か所目の自治体への調査が未実施であることにより、旅費の支出が予定よりも減となった。また、データ入力をアルバイトに依頼する計画を立てていたが、初めて取り組むインタビュー調査であることから平成26年度調査分の逐語録作成は研究者自身がほとんど行い、人件費の支出が予定よりも少なくなった事が主な理由と考える。
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次年度使用額の使用計画 |
2か所目の被災自治体への調査にかかる費用、グループインタビュー時の記録や研究データ入力にかかる人件費、研究成果の発表ならびに論文投稿にかかる費用、研究協力者と協力機関への報告にかかる費用として使用する。
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