本研究の目的は、生計就労を軸とした社会システムにおいて組織活動と生産活動に馴染んできた男性高齢者の性差を活かし、生きがい就労を介護予防につなげることである。 研究対象とする小離島A島では、人口は減少の一途を辿り、高齢化率45.9%で限界集落となりつつあるなか、NPO法人による島の特徴を活かした高齢者のための新たな事業(生きがい就労)が進められている。 平成27年度は、①A島における介護予防の方向性を見出すために、高齢者の地域活動(伝統行事、地域行事、NPO法人が関与している地域行事)について、その参加の実態と生活満足感・幸福感との関係を検討すること、②A島における地域包括ケアシステムの方向性を見出すために、地域活動への参加と相互扶助との関係を検討すること、を行った。 その結果、①A島の高齢者の地域活動の様態は、活動内容ではなく、参加活動数に依拠することが示唆された。また、地域活動への参加度の「高群」は、生活満足感と幸福感に肯定的な影響があった。②相互扶助における支援者になる類型ほど多様な地域活動への参加者が多かった。 以上のことから、A島の介護予防を含む地域包括ケアシステムの方向性として、多様な地域活動への参加への支援が有効であろうと示唆された。
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