研究課題
本研究は飲食店の受動喫煙防止対策実施状況を明らかにする評価ツールの開発を4年間で行う予定の研究である。3年目となる今年度は、主に評価表の修正と評価項目の重み付けについて検討した。客観的評価項目(「浮遊粉塵濃度」、「PM2.5」、「風速」)については、積極的に受動喫煙防止対策を行っている店舗では計測の理解が得られやすいが、そうでない店舗では難しく、また、計測に協力的な店舗で集客にプラスになる可能性があっても、忙しい勤務の中、規定通りの方法で自主的に計測することは想像以上に困難であった。この結果は、喫煙客のために店を禁煙化しないと決めた全席喫煙可の店舗であれば、喫煙できることがその店の売りになるはずだが、その実態を公表することは店のイメージの低下につながると考えていることを示唆している。他の喫煙者のタバコ煙を吸いたくない喫煙者も多いため、全席喫煙可の店舗であっても受動喫煙防止対策は必要であるが、飲食店経営者がその対策に自信がないことも理由の1つであると考えられる。この不安は禁煙店、分煙店にも共通していると考えられるため、評価表を記入することで受動喫煙防止対策に関する不安を解消できるような評価表を作成していきたい。最終的には、客観的評価は飲食店側の負担が大きく、簡易に評価できる評価ツールを目指すという目的に沿って削除することとした。さらに、様々な人々が評価ツールを使用することを考慮し、使用者が異なっても同じ評価となるよう、評価に差異が生じた項目を修正した。評価項目の重み付けについては、分煙店舗の評価項目についてモデル店舗での評価を通して検討した。しかし、本研究では各飲食店のタバコ環境に合わせたピクトグラムを作成するため、評価項目の重み付けとピクトグラムを合わせて検討する必要があり、ピクトグラムの原案を現在作成中である。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画では、平成28年度は「評価ツールを用いて受動喫煙防止対策実施状況を評価する」ことを目的に、平成27年度に作成した評価ツールを用いてモデル店舗で現地調査を行い、①評価項目の重み付けや評価後のランク分け(分類)を踏まえた評価表の修正、②質問紙調査の実施、③実態調査の評価者トレーニングを実施する予定であった。しかし、現地調査について具体的な内容を飲食店側に説明し、聞き取りを行ったところ、統計処理が可能なサンプル数を収集することは困難であるという結論に至った。そこで昨年度から計画していた質問紙調査に現地調査の評価項目を追加することにした。これに伴い、③は不要となり、②については現在、修正した質問紙調査の準備中である。①については、評価項目の重み付けやランク分け(分類)を検討するため、現在ピクトグラムの原案を作成中である。研究計画の修正が必要となったが、最終年度に実施する予定であったピクトグラムの作成に取り組み、調査中に評価ツールのユーザビリティに関しての情報を得ることができたことを考慮し、達成度は「おおむね順調に進展している」と評価する。
研究4年目(最終年度)に当たる平成29年度は、現地調査で評価する予定であった評価項目の内容を含む質問紙調査を実施し、その結果をもとにピクトグラムの作成と並行して評価項目の重み付けと分類を行う。研究計画当初はタバコ環境を客観的に評価するため、測定機器を用いた現地調査を行う予定であったが、飲食店に具体的な聞き取りを行ったところ、飲食店業界を取り巻く現状や受動喫煙防止対策に関する飲食店の考え等、様々な理由により、評価項目の妥当性を検討するために必要なサンプル数を得ることは困難であるという結論に至った。また、昨年の調査で人間が感知できる臭いを機械で数値化できなかったことを含めて検討した結果、評価項目から「浮遊粉塵濃度」「PM2.5」「風速」を削除し、その他の評価項目を質問紙調査の内容に取り入れることで受動喫煙防止対策の評価項目を検討する計画に変更することとした。
測定機器を用いた調査を含む現地調査から質問紙調査に変更することになり、その経費を平成28年度分から捻出することとし、平成29年度分に移行した。
平成29年度は平成28年度の研究費残額と平成29年度の研究費の合計2,086,483円を使用する予定である。その内訳は以下の通りである。物品費(資料等)50,743円、旅費(研究成果発表、研究打合せ等)230,000円、人件費・謝金(質問紙調査、校閲等)1,322,900円、その他(学会誌投稿料、学会参加費、等)482,840円、計2,086,483円。
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