平成30年度は、最終年度ではあるが、前年度に引き続きホテル・旅館の衛生環境の実態を把握するため衛生環境調査の協力を呼びかけ、1施設のホテルから協力を得られた。これまで衛生環境調査を実施した7施設および感染症予防教育を実施できた1施設のデータの分析を行った。 衛生環境調査においては、共通してみられた交叉感染リスクが高い箇所として、公共スペースでは、フロントテーブル・椅子、エレベータのボタン、階段手すり、トイレのドアノブ・蛇口・照明ボタン、従業員スペースでは、エレベータのボタンであった。また個別スペース(客室)では、洗面台の蛇口であった。交叉感染リスクの特定においては、感染症に関わる専門家にスーパーバイザーとしてアドバイスを受けて、現状の分析・課題について検討をおこなった。現状の衛生環境の整備状況としては、基本的には1日1回、トイレに関しては1日1~2回の清掃状況が多く、清掃物品としては雑巾を用いた方法がとられていた。また、これまで行った調査より、従業員の感染症に関する知識も十分でないと考えられる。 そのうえで、ホテル・旅館に共通してみられる交叉感染リスクを軽減するために、アルコール含有クロス等の利用や清掃箇所および素材の違いによる清掃方法の選択の提案や、従業員に対して、交差感染リスクの高い高濃度接触箇所の意識付けのためのチェックリスト等を含めたガイドラインの検討を行った。 ホテルや旅館業のように不特定多数の方が利用する空間である公共のスペースの衛生環境の維持や、従業員が利用するスペースについては注意喚起を図っていくことが重要であることが明らかになった。また、本研究成果については、第20回日本災害看護学会にて公表した。
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