研究課題
本研究の平成28年度における主な取り組みは、前年度までに実施した家族支援プログラムの効果検証を行うことである。本研究では長期ひきこもりの子どもをもつ家族向けに全6回からなる集団型プログラムを作成した。プログラムはひきこもり問題に特化した講義形式の心理教育とコミュニケーションスキルを獲得する体験型の実習からなる。参加者に行ったストレスコーピング、家族レジリエンス、ひきこもり度等の複数の尺度得点を前後比較したところ、複数の因子で有意に改善がみられることがわかった。また、得点の改善度はプログラムへの取り組み度が高いほど有意に改善がみられることもわかり、参加者の動機付けを高め、より取り組みやすく実践できるよう工夫していくことが重要であると考えられた。約1/3の参加者には子どもが実際に支援につながったり、社会参加ができた。また、他の約1/3の参加者はプログラム参加前よりも子どもと積極的に支援について話題にすることができるようになった。今後は変化の無かった1/3の参加者に対するアプローチを改善していくことが課題として考えられる。さらに、参加者やひきこもり経験者へのインタビュー調査も実施した。その結果、個人や家族のリソースが向上し問題解決力が機能していく過程が概念化された。特に子どもの肯定的反応や協力者のサポートをいかに引き出すかが重要であると考えられた。また、プログラム参加者を対象とした振り返りの会での集団インタビューからは、プログラム終了後もスキルを反復して定着していくことの重要性と、他の家族とのつながりによって自分たちの家族を相対化して見つめ直すために当事者家族同士で意見交換できる定期的な機会が有効であると思われた。
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