平成27年度は、北海道大学工学研究院工学院原子力システム安全工学研究室の実験室において「原子炉過酷事故時の炉心溶融回避のための安全系の確実な作動保証に関する研究」にて提案した実験装置構築を完了した。本実験装置においては、研究提案の対象である非常用復水器や静的炉心注水系に見られるU字配管系の曲がり部を対象とし、1インチ配管系内にて生じる全流動様式の可視化ならびに励振力測定を可能とした。励振力測定部位はステンレス製エルボーを採用し、共振を回避するため二相流の周波数領域よりも高い固有振動数に設定した。また、励振力と気液二相流形態の関連性を調査するため、管内液膜厚さを含めた管内ボイド率変動を計測するためのボイド率計測器を設計し、ドリフトフラックスモデルをベースとした校正曲線を基にデータベース取得に用い、正常な作動を確認した。以上に加え、圧力センサも配管エルボー部に設け、管内気液二相流にて見られる様々な流動様式におけるデータベースを構築した。本実験装置により取得したデータベースから、二流体モデルを基に、入り口と境界条件のみから気液二相流流体励振力スペクトルを予測モデルを作成した。垂直上昇二相流においては、1インチ配管系において最も顕著な振動を引き起こすと予想されるスラグ流領域において、最大励振力振幅、卓越周波数を概ね良い精度で予測可能とした。本研究課題にて開発された1インチ曲がり配管部での励振力ツールは、全気液二相流動様式において適用可能であるため、管内二相流現象が生じる化学プラントや工業用熱交換器等の安全設計の観点からも役立つものと期待される。
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