研究実績の概要 |
本研究は、内視鏡に導入可能な蛍光相関分光法(Endoscopic Fluorescence Correlation Spectroscopy, ES-FCS)計測装置の開発を行うものであった。これが実現することで、これまで不可能であった動植物個体内における生体分子のin situ計測が実現できる。これにより、実際の動植物個体の薬物に対する応答などを、生体分子レベルで生きたまま観測することが可能になると期待でき、生物学や医学に大きく貢献できると考えられる。本課題では、この実現に向けて、レンズドファイバを用いたES-FCS装置を構築し、その動作が可能であることを実証し、最終的には培養細胞内での計測を目指した。 本年度の計画では、(1) 装置の性能向上、(2) 培養細胞内計測の可能性を示す、(3) ES-FCSにおけるレンズドファイバの球面収差が計測結果に与える影響の検証を目的とした。(1)では、装置の改良により、蛍光検出感度を4.3倍に向上させ、かつ焦点領域の体積を1/18にまで縮小するという、大幅な改良に成功した。これにより、直径63 nmまで小さな黄緑色蛍光ビーズにおいてFCS計測が可能となった。(2)では、測定試料作製の困難さから、実際に培養細胞内での計測は実現しなかったものの、ES-FCS自体の性能としては、生細胞内計測は十分に可能であるという知見が得られた。(3) 計測によって得られた集光領域のサイズ(形状)が、理論上球面収差が無い時に得られる形状に相当したため、ES-FCSにおいて球面収差が大きな問題とならないと確認できた。 助成期間を通して、ES-FCSの開発と実証に成功し、生きた生物個体内でのFCS計測の実現への第一歩を踏み出せたと言える。
|