本年度は主に、合成高分子、セルロースを第1網目とした各DNエラストマーについて組成最適化を行った。 合成高分子システムにおいて、既にある程度強靭なDNエラストマーは得られている。しかし、おそらく第1網目に対する第2網目の濃度が十分でないため、研究開始前に想定したタフネスや破断歪が得られないという問題があった。本問題に対し2種類の方法でアプローチを行った。まず第1網目に電解質を組み込むこと、また第2網目合成時の誘電率をコントロールすることにより、第2網目前駆体溶液中で第1網目を大きく膨潤させることに成功した。これにより第1網目の希薄化に成功し、従来よりも両網目組成比が最適化されたDNエラストマーを創製した。また、第1網目を極めて希薄、高架橋密度条件で合成し、その内部で第2網目を重合することにより、第1網目の膨潤に頼ることなく両網目組成比を最適化する手法も開発した。これらの手法により、極めて優れた強度と破断歪を有する合成高分子系DNエラストマーを創製した。 セルロースシステムにおいて、セルロースをゲル化させる際の水添加の方法を工夫することにより、セルロースDNエラストマーの物性をさらに向上させることに成功した。得られたDNエラストマーは、セルロースを2.5wt%添加することで、セルロース未添加エラストマーの20倍もの破壊エネルギーを有するに至った。これは、天然ゴムやスチレン―ブタジエンゴムに30vol%のカーボンブラックを添加した際の破壊エネルギー向上率(約3-4倍)を大きく上回る値である。さらに、セルロースのゲル化過程を制御することで配向を導入し、セルロース配向方向には高強度、配向と垂直方向には髙延伸という、物性に大きな異方性を有するDNエラストマーの開発も行った。
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