ASR は真正細菌であるシアノバクテリアから発見された微生物型ロドプシンファミリーに属する光応答膜タンパク質である。ASRが光合成色素タンパク質の遺伝子発現を直接制御することが近年、明らかになったが、その構造基盤は全くの不明である。本研究はASRによる遺伝子発現の制御機構を明らかにするためにASRと関連分子との間の相互作用をNMR法により明らかにし、光応答膜タンパク質ASRによる光合成色素タンパク質の遺伝子発現調節の機構を明らかにすることを目的とする。 ASRおよびASRTはすでにそれぞれ単独の結晶構造が報告されており、基本的な試料調製法が確立しているが、本研究の相互作用解析にそのまま用いるには現状問題がある。26年度において、まずASRとASRTに関する種々のコンストラクトをデザインし、相互作用解析に適した試料コンストラクトの検討を行った。また、ナノディスクを用いた試料調製法を検討した結果、安定なASRの試料調製に成功した。27年度において、ナノディスクによる相互作用解析に適した試料調製法の検討を行った。等温滴定カロリメトリー、円偏光二色性測定、動的光散乱測定、閃光光分解測定を用いてASR、ASRT及びナノディスク膜骨格タンパク質のぞれぞれの最適なコンストラクを確立した。また、ナノディスクの系として初めてASRとASRTの間の相互作用を捉えることに成功した。
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