研究課題/領域番号 |
26870016
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 昭人 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40507571)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯周組織再生 / エマルション / 骨ペースト / 多孔質体 / 再生医学 / 動物実験 / PLGA |
研究実績の概要 |
今年度は,α-TCP/PLGA微粒子エマルション骨ペーストの生体適合性を組織学的に評価した. α-TCP(太平化学産業)とポリリン酸エステルで被覆したPLGA(50:50,シグマアルドリッチ)の微粒子をヒマシ油と混和した.微粒子の混合比は,30wt%α-TCPのみ,あるいはそれに10,20wt%PLGAを添加した3種類とした.その後純水を添加,超音波を5分間照射してエマルション骨ペーストを調整した.続いてラット背部皮下にエマルション骨ペースト(0.2ml),およびインキュベーターに静置して完全に硬化させたエマルション硬化体(直径7mm,厚さ2mm)を埋入した.術後10日に生体親和性を観察するとともに,画像解析ソフトで細胞侵入率を計測した.また一部のサンプルは摘出してイングロースした細胞のDNA量を測定した. すべての移植試料に接する皮下結合組織には炎症性細胞浸潤をほとんど認めなかった.エマルション骨ペーストを埋入した結果,細胞や血管がペースト内部へイングロースしているのを認め,残留するセラミクス表面には多数の巨細胞を観察した.一方でエマルション硬化体を埋入すると,巨細胞が観察されるもののイングロースはわずかであった.エマルション骨ペーストへの細胞侵入率は,α-TCPのみ,および10wt%PLGA試料で50%前後,20wt%PLGA試料で80%前後であった.一方エマルション硬化体への細胞侵入率はどれも10%程度で少なかった.また,エマルション骨ペーストのDNA量は20wt%PLGA試料で最も高く,α-TCPのみに比較して約5.6倍であった. 以上より,エマルション骨ペーストは良好な生体適合性を示し,PLGAを添加することで細胞のイングロースが増加することが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り平成26年度は,In vitroにおける評価やラット移植手術による生体適合性試験を行い,有益なデータを集めることができた.また,実験結果をまとめて学会発表を行うことができた.今後は計画通り,ラット頭蓋骨に移植した場合の骨増生評価や中型動物に歯周組織欠損モデルを作製し,エマルション骨ペーストの移植手術を行っていく.それらの観察・計測結果をとりまとめた後は学会発表ならびに論文投稿の予定である.
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今後の研究の推進方策 |
現在順調に動物実験を行っており,観察期間が終了次第,組織標本作製を行っていく.組織標本作製後には組織学的観察ならびに組織学的計測を行い統計処理するが,これらの作業には時間を要するため指導大学院生(大学院2年:舘山)にも研究協力してもらい,速やかに結果をまとめる方針である.結果は,学会発表,論文投稿で本研究の成果を公表予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
・平成27年3月10日~16日の旅行で,平成27年4月の支払いとなった旅費があったため。 ・上記旅行が天候不良のため日程短縮,航空便変更となり,旅費の金額が下がったため。
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次年度使用額の使用計画 |
・未使用額のうち236,239円は,平成27年3月10日~16日の旅行の平成27年4月支払いに充てる。 ・残りの未使用額は,次年度研究遂行に必要な実験消耗品の購入に充てる。
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