研究課題/領域番号 |
26870021
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
高野 量 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 研究員 (90722588)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 熱帯熱マラリア / 病原性 / 輸送タンパク質 / 分泌タンパク質 / 免疫沈降 / 質量分析 / プロテオミクス解析 / ノックアウト原虫 |
研究実績の概要 |
熱帯熱マラリア原虫は,ヒトに感染するマラリア原虫の中で,最も重篤な症状を引き起こす.この重症化には,マラリア原虫が感染した赤血球の血管内皮細胞への接着が必須である.接着には,原虫由来タンパク質PfEMP1が,赤血球表面に提示されることが必須であり,本研究では,このタンパク質の赤血球表面への輸送に関与する,新規タンパク質の同定を目的とする. 本年度は,昨年度に同定したPfSBP1と相互作用する256の宿主・原虫由来因子について解析を進めた. 第一に,同定した原虫因子に対して,Cytoscapeを用いたバイオインフォマティクス解析を行い,STEVOR,PfMAHRP1,PfMAHRP2,PfREX1,PfREX2等といった既知の原虫由来輸送タンパク質とともに,マウレル裂を経由して感染赤血球表面に提示される原虫抗原PfEMP1,PfPIESP2等が,同定されたタンパク質リストには有意に多く含まれていることを明らかにした.第二に,小麦胚芽無細胞タンパク質翻訳系を用いて,各因子に対する特異的抗体を作出し,これらの結果の実験的検証に成功した.最後に,同定した原虫因子の中から,12遺伝子に着目し,これらを欠損したノックアウト原虫の作出を試みた.現在までに,10種類の遺伝子欠損変異体の作出が完了しており,残り2因子については鋭意作製中である.今後は,これらの原虫を感染させた赤血球と,血管内皮細胞レセプターCD36との結合親和性を解析し,マラリア重症化に関与する因子の選別を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の成果は,本来の目的であるPfEMP1の赤血球表面への輸送に関与するタンパク質の同定に直結するものであるが,全因子に対する遺伝子欠損変異体の作出が完了しなかったことを鑑みて,やや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子欠損変異体作出が遅れている2因子については,ノックアウト用プラスミドを保持する組換え原虫の作出には既に成功しているため,研究遂行上の懸念になるとは考えられず,特に対策は講じない. 今後は,得られた遺伝子欠損変異体を用いて,マラリア病態に与える影響について解析する.具体的には,血管内皮細胞に発現する受容体であるCD36に対する結合親和性を測定し,野生株のそれと比較して有意に減少したものを選別し,マラリア重症化に関与する因子を特定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に研究代表者は,スクリーニングにより得られた12個の熱帯熱マラリア原虫由来遺伝子について,これらを欠損した変異原虫(ノックアウト原虫)の作出を試みた.しかし,これらのうち2因子について,その作出に想定以上の時間を要し,未だノックアウト原虫が得られていない.この変異原虫を得るため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
既にこれら2因子について,ノックアウト用プラスミドを保持する原虫は得られている.これらの原虫の薬剤存在下での培養を引き続き継続し,増殖過程において相同組換えを起こし遺伝子欠損体が得られた後,クローニングすることで単一の遺伝子欠損変異体を得る. 既に作出に成功している10因子のノックアウト原虫と合わせて,CD36レセプターに対する結合親和性試験を行い,野生株と比べて結合親和性が低下した因子の選定を行う. 本年度の研究費は,遺伝子欠損変異体等の培養のための器具,試薬類,並びに結合親和性試験を行うための試薬類の購入に用いる.
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