研究課題/領域番号 |
26870023
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
吉川 泰弘 北見工業大学, 工学部, 助教 (50414149)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 結氷河川 / アイスジャム / 河氷 / 氷板 / 晶氷 / 数値計算 |
研究実績の概要 |
過去に発生したアイスジャムの河道条件をみると,現地観測および既往研究から,川幅が狭窄部の地点,水深が氷厚に対して浅い地点,下流に固定した氷が存在している地点であることが多い.しかし,これらの地点において,アイスジャムの初期から終期までを観測することは困難であり,河氷閉塞メカニズムの時系列的な現象が未解明である. 平成26年度は,水理実験を実施し,河氷閉塞メカニズムの時系列的な現象を明らかにした.実験水路は幅0.8m,延長8m の水路を用い,実験で用いる氷は,実際の河氷と同等の比重(0.92) であるポリプロピレンとして,各閉塞地点を再現した実験ケースにおいて以下の測定を行った.平面動画撮影(水路上方にデジタルカメラ2 台を設置),側面動画撮影(水路側壁をアクリルで製作し水路側壁にビデオカメラを設置),水位測定(水面に氷が存在するため,水路床に圧力センサーを設置して測定),水温測定(水温により密度が異なるため測定). 得られた知見(1)本実験において,水路幅が狭い箇所の上流となる水深が深く流速の遅い箇所において,アイスジャムが発生した.氷板模型が堆積すると水位は上昇する.上流の水位が上昇し水面勾配が大きくなると,上流の氷板模型は下流へと流下する.下流では氷板模型の密集度が高くなるため,水位はさらに上昇する.本実験条件では,水路幅が狭い箇所,水深が浅い箇所ではアイスジャムは発生しなかった.(2)氷板のフルード数により,アイスジャム発生の可能性を評価できることが分かった.氷板サイズが大きく,氷板量が多く,流量が少ないほど,アイスジャムは発生しやすい. 本研究により得られた成果は,河道形状の影響を考慮したアイスジャム発生条件に関する新しい知見であり,アイスジャム災害の防災・減災対策を考案する際の重要な基礎資料となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究の目的は以下である. ・河氷が閉塞する地点として,川幅が狭窄部の地点,水深が氷厚に対して浅い地点,下流に固定した氷が存在している地点に着目した水理実験を実施して現象を把握する. 平成26年度は,当初計画で予定していた実験を実施した.得られた実験データは,解析を進めており,順調に研究は進捗している.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の実験では,水深が浅い箇所でのアイスジャムの再現が出来なかった.また,実河川において支川が合流する箇所でのアイスジャム発生も予見されている.平成27年度は,水深が浅い箇所,支川合流部でのアイスジャムに着目した実験を行う予定である. 本研究で開発する計算モデルは,広く普及することを念頭におき,Lagrange的方法に比べて計算負荷が小さく,河川分野で一般に用いられているEuler的方法を採用する.河氷閉塞メカニズムは,河川の氷が物理的に河道を塞ぐため,河氷の移動速度が遅くなり河道内に堆積する現象が考えられる.本計算モデルは,固体である氷の流動を河川水と同様に運動方程式を用いて表現するため,河氷が物理的に河道に閉塞する現象をモデル化する必要がある.実験データを基に,氷と水の境界での摩擦,氷と氷の境界での摩擦,氷と河床の境界での摩擦を適切にモデル化する.本年度の研究の進捗により,河道条件を考慮した河氷閉塞メカニズムの表現が可能となり,より普遍性のある研究成果が得られる.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では,動画解析ソフトウェア45万円を購入予定であった.このソフトウェアは,氷板模型の速度を計測できる.本年度は,共同研究者により,この解析を実施して頂いたので,本ソフトウェアの購入を見送った.
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次年度使用額の使用計画 |
実験データを取得および解析するに当たり,必要となる機材などの購入を予定している.
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