研究課題/領域番号 |
26870024
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
小川 博司 旭川医科大学, 医学部, 助教 (60632536)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | Electrocorticogram / High gamma activity / brain mapping / epilepsy surgery / awake craniotomy |
研究実績の概要 |
従来、脳機能マッピングのゴールドスタンダードは脳皮質電気刺激(ECS)マッピングであったが、多くの測定時間を要することや痙攣のリスクが有り侵襲の高い検査法であった。こうした背景をもとに、脳皮質脳波(ECoG)の高周波成分(60-120Hz)である高周波律動(High Gamma Activity: HGA)を用いた脳機能マッピングの臨床応用について研究を進めてきた。ECoGは自発脳波であることから痙攣のリスクは少なく、硬膜下電極上から短時間でマッピングができる。そして、信号/ノイズ比も十分に高いことから、ECSマッピングの代替法として有用であると考えた。さらに、われわれは、リアルタイムにHGAマッピングの結果を表示する手法を用いることで、より臨床の現場で応用しやすいマッピング法として改良してきた。現在までにてんかん外科症例8例と覚醒下手術症例12例の合計20例でデータを収集できた。主に、手指運動課題(運動機能マッピング)と言語課題(言語機能マッピング)を行い、その精度を検証した。概して良好な結果が得られ、HGAマッピングは痙攣のリスクなく、従来のゴールドスタンダードであるECSマッピングと十分整合性が有ることを示せた。また、マッピング時間についてもHGAマッピングがECSマッピングより有意に時間短縮できていることも示すことができた。計測時間の短縮は、検者・被検者の精神的・身体的負担を軽減するのみならず、覚醒下手術では手術時間の短縮にともなう医療経済への貢献もできる可能性が示された。これらの結果については国際学会での発表や日本語論文、および英語論文にして国内外へ発信し、評価を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
HGAマッピングの精度を検証するため最低20症例を目標としていたが、初年度内に目標を達成できた。結果としてHGAマッピングのECSマッピングに対する整合性は感度、特異度ともに90%を超える結果が出ており、当初目標としていた85%以上を上回る結果となった。また、症例が多く集まったことから、いくつかの症例について国際学会での発表、および、症例報告や原著論文として論文発表することができた。研究環境については、脳波計を作成しているg-tec社との交流も順調に進んでおり、その都度課題の洗練や測定機器のアップデートにより常に最先端の環境で脳機能マッピングを行えている。今後も、より良い測定環境を実現するため、定期的なミーティング・交流を継続していく。
|
今後の研究の推進方策 |
目標としていた20症例を集めることができたため、これらをまとめて原著論文として英文論文として投稿する予定である。現段階では、HGAマッピングは表層の灰白質のみを検出しているのみで、深部白質線維の機能を反映できていないのではないかという課題がある。この深部白質線維の機能的ネットワークを検出する手法として2004年に松本先生がBrainで報告した皮質-皮質間誘発電位(Cortico-cortical evoked potential: CCEP)が有用と考えている。留置硬膜下電極を用いてHGAマッピングで検出された部位と、そこからのCCEPを検出することにより、表層の灰白質のみならず、深部白質までマッピングができる可能性を考えている。また、HGAマッピングは課題遂行が必要であるが、課題遂行なしでのマッピングを検討中である。これにCCEPを組み合わせることができれば、従来の覚醒下手術が非覚醒状態でも行えるという可能性がある。次の目標は、こうした非覚醒マッピングであり、これが実現できれば革新的なマッピング法となることが期待できる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
測定に必要な最低限の機器類は整備できた。しかし、計測機器のアップデート、周辺機器やケーブル、硬膜下電極などの消耗品に関わる費用は必要である。また、継続的な学会発表に伴う旅費・参加費や論文投稿に際しての英文校正、別刷り代などが必要である。また、今年後はg-tecとの相互交流のための費用も計画している。
|
次年度使用額の使用計画 |
現在英文1本、日本語2本について掲載が予定されており、今後カラー印刷代金、別刷り代金を算出している。また、現在これまでの20症例のまとめについて論文執筆中であり、それに伴う同様の費用を算出している。計測に関しては、硬膜下電極とリード線などの消耗品は必要として算出している。また、データが蓄積してきたことにより、新たにハードディスクやパーソナルコンピューターの導入も必要に応じて購入予定である。学会発表は昨年と同様に参加する予定であり、これに伴う費用を算出している。今年度は、g-tec社と新たな計測機器の導入・施行予定であり、相互交流のための費用を予定している。
|