研究課題/領域番号 |
26870025
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
山本 雅大 旭川医科大学, 医学部, 助教 (30431399)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肝発現 / 癌遺伝子 / Cre LoxP / Sleeping Beauty |
研究実績の概要 |
がんの発生には複数の癌遺伝子が関与するが、一旦腫瘍が形成された後にそれら癌遺伝子がどのような役割を担っているのかは不明な点が多い。われわれは、生体内においてマウス肝細胞に複数の癌遺伝子を導入し肝癌を発生させる研究を行っており、本研究では、肝癌が発生したのち発癌に要した遺伝子を欠失させ、それら癌遺伝子の腫瘍の維持における役割を明らかにする。 遺伝子を欠失させる方法として、Cre-LoxPシステムがある。この方法は、欠失させたい遺伝子をLoxP配列で挟んでおき、そこにCreリコンビナーゼ(Cre)という酵素を発現させると、CreがLoxPで挟まれた箇所を切り出し特定の遺伝子を欠失させるという方法である。本研究ではこれまでに、(1)発癌実験に用いているプラスミドにおいて癌遺伝子がLoxPに挟まれていると、実際にCreが遺伝子の欠失を起こすかどうかの検討、(2)肝腫瘍組織でCreの発現を誘導する方法の検討を行った。 (1) 肝臓特異的にCreを発現してるAlb-Creマウスに、癌遺伝子がLoxP配列で挟まれたものを導入した場合は腫瘍が誘導できず、癌遺伝子がLoxP配列で挟まれていない場合には肝腫瘍が誘導できることを確認した。Creが発現すれば使用しているプラスミドの癌遺伝子を欠失させることが可能であることが明らかになった。 (2) 肝腫瘍にCreを誘導する方法として、Mx1-Creを用いた方法とAAV8を用いた方法を検討した。どちらの方法の検討も、腫瘍形成後にCreの誘導を行い3-7日後の変化を検討した。いずれの方法でも、腫瘍の退縮は見られず、Mx1-Creではほとんど遺伝子の欠失は見られず、AAVでは腫瘍の5-10%に遺伝子の欠失が見られた。いずれの方法でも十分な効率での遺伝子欠失は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度において、腫瘍にてCreリコンビナーゼを発現させる方法を4つ検討する予定であったが、2つの検討が終了していない。それらはERT2-Creを用いた方法とTet-ONシステムを用いた方法であり、プラスミドの作製がうまくいかなかったためそれら方法の検討が遅れている。現在方法を変えて、プラスミドの作製を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
Creリコンビナーゼが発現すると癌遺伝子の欠失を起こすことができることが確認できているので、今後は全ての腫瘍細胞に効率良くCreリコンビナーゼを誘導できる方法の確立を目指す。検討する方法は、ERT2-Creを用いた方法とTet-ONを用いた方法で、現在プラスミドのクローニングを進めている。これら方法は、癌遺伝子と同時に肝細胞に導入するため、全ての癌細胞にCreリコンビナーゼを発現させる仕組みを組み込むことができ、高い効率でCreリコンビナーゼを発現させることができることが期待できる。 腫瘍細胞でCreリコンビナーゼを効率良く発現させる方法を確立したのちには、myrAktとHrasの両方または片方ずつを腫瘍形成後に欠失させ、それら遺伝子の腫瘍形成後の役割について検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに2つのプラスミドのクローニングが終了しておらず、そのプラスミドのテストに必要な経費が支出されなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、2つのプラスミドのクローニング終了後に、プラスミドが実際に動物内ではたらくかどうかの検討に支出される予定である。
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