研究課題
癌の増殖・浸潤・転移といった生物学的な特性は、癌実質がおかれた微小環境との相互作用が影響していると考えられている。また、時計遺伝子の発現異常が乳癌発症に関与していることが注目されている。癌細胞において時計遺伝子が発現しているとの報告が散見されたが、癌微小環境と時計遺伝子との直接的な関連性を示す報告はほとんど無い。癌微小環境を考慮した発育進展制御の解析は、従来の細胞解析法に比べ、より生体に近い環境を反映し、新たな癌増殖制御機構の構築に繋がると考えられる。本研究では、ヒト乳癌細胞において時計遺伝子DEC2は、低酸素条件下での癌細胞の cell viability を促進することが明らかにした。DEC2 はHIF-2α-Akt-c-myc 経路における、Akt の下流因子として、細胞増殖に関わるc-myc 遺伝子の転写を促進した。また、ヒト食道癌細胞において、時計遺伝子DEC が、上皮間葉移行 (epithelial-mesenchymal transition,EMT)誘導因子の一つであるtransforming growth factor (TGF)-β のエフェクターとして働いていることを明らかにした。一方、DEC1 過剰発現では、リンパ管マーカーである podoplanin と正の相関を有し、DEC2では、負の相関を有することが示唆された。時計遺伝子により規定される癌細胞増殖やEMTの機序が解明されることで、時計遺伝子を標的とした新しい乳癌治療の基礎研究となりうる。さらには、乳癌と他臓器の癌との比較により、他臓器の癌における、時計遺伝子の制御機構解明へも応用可能である。
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