研究課題/領域番号 |
26870029
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
平井 太郎 弘前大学, 大学院地域社会研究科, 准教授 (70573559)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 集合住宅管理 / 社会問題 / レトリック分析 / コミュニティ / 自治 / 市場化 / 日本的経営 / アクション・リサーチ |
研究実績の概要 |
今年度は管理会社とその団体および特徴的な管理組合と協力し、集合住宅における問題解決の過程について、社会問題のレトリック分析を実施した。 1)居住者レベル 東京圏・大阪圏から6つの集合住宅を抽出しその居住者に質問紙調査を行い、問題の認知と組織的対応の過程を分析した。本調査では、個別課題ごとの満足度に加え、全体的な満足度に占める個別課題の比重を尋ねたことにより、組織的対応の容易さ、問題解決の効果の高さ、個別課題間の相互関係など、従来は明らかでなかった複雑な問題過程を描出することができた。その成果は花里俊広編著『マンション管理業における業務提供価値の明確化に関する研究』(2014年12月)に収められた。 2)管理組合レベル 東京都区部の集合住宅で組合幹部へのヒアリングと組合が編集刊行する規約集やミニコミ誌などの内容分析により、居住者やその組織の特徴と問題解決の組織的対応との関係性を分析した。従来、組織的対応は関係者による「自治」(コミュニティ)と「市場」への依存の2種類にモデル化されており、対象地も建設直後は「市場」モデル、現在は「自治」モデルと見なされる矛盾があった。しかし、本研究の結果、調査対象は本来、両者の中間にあたる「日本的経営」モデルと呼ぶべきであり、このモデルは「日本的経営」が社会的に定着・残存している事実を踏まえれば一定の普遍性を備えていると判断された。同時に、「日本的経営」自体が女性や非正規雇用・自営業者などを排除しているのと同様に、集合住宅管理の同モデルにも排除の構造が拭えず、そこに組織の疲弊などの固有の課題が起因していることを明らかにした。この成果は平井太郎・祐成保志「大規模集合分譲住宅における「住む主体」の形成過程」『住総研論文集』第41号(2015年3月)に収載された。 なお1)2)とも当事者を交えた討議および報告会を重ね当事者の状況認識の変化を生み出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度研究計画で掲げた3つの研究課題のうち、2と3については計画以上に進捗し具体的な成果を挙げることができた一方、1については国の法制度検討組織の審議状況が不安定かつ現在進行中であり、資料入手に限界があったことから成果報告には至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度研究計画に挙げた経験知の共有にむけた取組みについては、既に管理会社の団体から協力を得られる体制を構築したので計画どおり遂行する。また、法制度検討組織の審議状況を注視しつつそのレトリック分析を進め、国際学会でのトータルな研究成果にかんする報告を行う。
|