研究実績の概要 |
東日本大震災の被災地では、周産期合併症や低出生体重児の割合の増加が注目された。低体重は様々な障がいの重要な要因で、成人後の生活習慣病との関連も指摘され、震災被災に伴う障がい児の増加を強く懸念している。このため本研究では、被災地(石巻医療圏)の低出生体重児の身体的、精神行動学的な発達の両面について、縦断的な観察研究を実施した。低出生体重児群(2500g未満)(n=201)を登録し、質問票調査と医師カルテを参照し、出生体重とそれに関連する要因について検討した。重回帰分析(JUMP ver. 1.0)の結果より、基本属性(在胎週数、出生身長、体重とポンデラル指数などの出産状況)の比較を行った。2群間の比較では、喫煙の有無で有意差を認めた(60%, 52%, P<0.01)。母年齢、収入、学歴などに差は認められなかった。また、在胎日数、妊娠期間中の母親の体重増が正に関連することも確認された。神経行動学的な発達検査として、新生児行動評価(生後3日目)、新版K式発達検査2001(生後6ヶ月、修正月齢)を実施した。その結果、新生児行動評価(生後3日目)では、喫煙習慣(自律系の安定性)、アプガースコア(自律系の安定性)、出生体重(原始反射)、出産順位(原始反射)との関連性に加え、罹災状況と原始反射スコアの間に統計学的な関連性が観察された。新版K式発達検査(生後6ヶ月)では、出産順位および喫煙習慣との間に負の相関が見られたものの、罹災状況との間に関連性は認められなかった。今後胎盤組織を用い、エピゲノム解析を行い、子宮内の環境評価を行う。また、正常胎盤におけるインプリント遺伝子を網羅的に検索する。
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