研究課題
東日本大震災の被災地では、妊婦への長期にわたる栄養不足、運動不足、心因性ストレス等のマイナスの生活習慣が、妊娠予後や、児の発育に重大な影響を及ぼし、その結果、低出生体重児の増加と妊娠高血圧症の割合が増加していることが判明した。また、2割以上の女性が、産後うつ病の疑いがあり、復興を担う若い世代が大きなストレスや不安を抱えている実態が明らかになってきた。本研究では、津波被災地(石巻医療圏)の低出生体重児を対象に、身体的発育、発達に加え、特に認知行動面をも考慮した徹底的な観察研究を子どもの成長のマイルストーンに照らし戦略的に把握するとともに、喫煙との関連性について調査を行った。結果、震災後一過性に周産期合併症や低出生体重児の割合の増加がみられた。低体重は様々な障がいの重要な要因で、成人後の生活習慣病との関連も指摘され、震災被災に伴う障がい児の増加を強く懸念している。本研究では、被災地の低出生体重児の身体的、精神行動学的な発達の両面について、縦断的な観察研究を実施し、特徴的な結果を導いた。本年度はまずエピゲノム解析を行い、次に胎盤組織を用い子宮内の環境評価を実施した。正常胎盤におけるインプリント遺伝子を網羅的に検索した。ヒト胎盤のインプリント遺伝子(エピゲノムで調整されている)を網羅的に単離同定することに成功した。その結果、28種類の既知インプリント遺伝子に加え、110種類の新規インプリント遺伝子を同定した。また、低出生体重児の胎盤細胞を用い、網羅的にメチル化インプリントの解析を行い、およそ80%にメチル化の変異があることを明らかにした。その結果よりヒト胎盤には、これまで考えられていた以上に多数のインプリント遺伝子があり、環境適応能力を評価することに適すると推測された。
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: 42336
10.1038/srep42336